第4話 合流



 ミントシティ 廃屋 地下ダンジョン入り口


 ユウたちが向かったのは、ミントシティの中のNPC(プレイヤーではなくAIが動かすキャラクター)の住んでいない廃屋だった。


 幸いにもアルンから寄越されたメールには地図も添付されていたので、迷う事無く向かう事が出来た。


 このミントシティは、オンラインゲームを始めたばかりのプレイヤーがまず真っ先に拠点にする町だ。

 なので、周辺のフィールドやダンジョンには、低いレベルのモンスターばかりが出現しているし、難易度の低いダンジョンが隣接していたりする。

 だが、しかし隠しダンジョンの類いは例外だった。


 ユウ達がいる現在地はまさにその例外の場所だ。


 そこは、最近になって発見されたダンジョンだが、隠されていただけあって、そのマップに出現するモンスターはかなりレベルが高かった。

 内部に存在するトラップも凶悪な物が多い。


 実際に来た事は無いが、情報屋を通じてユウたちはよくこのダンジョンの評判を耳にしていた。


 先頭に立ち、廃屋の内部を進んで行くウィーダがぼやく。


ウィーダ「なんっで、またこんな所に……」


 奥の部屋まで辿り着くと不安そうな表情をした中学生の少女プレイヤー、アルンが立っていた。


 桃色の髪を、ツインテールにして両サイドで結んでいる中学生だ。

 アルンは、十分に可憐と形容できる愛嬌のある顔をしていた。


 こちらの姿に気が付いた少女は、赤い瞳を丸くして驚く。

 アルンは表情を変化させて、先ほどの間での暗いものから明るいものにした。


アルン「あ、ユウ様! あと、ウィーダも」


 こちらに向かって足音軽く走り寄って来たアルンは、メールを寄越したウィーダには目もくれず、ユウに抱き着いてきた。


 アルンは甘える様な声で、こちらに頬ずりしながら言葉を続ける。


アルン「もう、どうしようかと思ってたんですよぅ。でもユウ様が来てくれたのなら、これで一安心ですぅ」


 猫撫で声とこちらを歓迎するような態度で接してくるアルンのその態度は、この非常時の状況ゆえのものではなく、いつもと同じものに見えた。


 そこに放置されていたウィーダが、突っ込みを入れる。


ウィーダ「俺の存在は無視かよ?」

アルン「何よ。あんたの存在に価値があるわけ? 女の子にモテるくらいしか能がない役立たず。あのメールは、あんたを呼べばユウ様が付いてくると思って送っただけなんから、変な勘違いしないでよね」


 アルンがそこに返す言葉は、ユウに向けるものとは正反対の、冷たくすげないものだった。


ウィーダ「なんだと!」


 アルンは、二面性がある性格をしているというわけではなく、気に食わない事は口に、態度にはっきりと会わらすタイプの人間だ。


 このまま二人でいがみ合わせるわけにはいかないので、ユウはこちらに頬ずりしてくるアルンを引きはがして、話の続きを促した。


ユウ「離れろ」

アルン「あっ」


 無理矢理剥がされて残念そうなアルンに、ユウはメールの件について尋ねていった。


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