第4夜 道ゆきの浮浪者
街道を歩いている。気持ちの良いお天気です。行き交う人を見ながら、この旅人は何処へ行くのか、こいつは商人だなぁ、こいつは農民かな、きっと余り急ぎでは無さそうだなとか、考えながらトボトボと歩いていた。そうした中、向こうの方から身なりの貧しい若者が歩いて来た。髪はザンバラで落ち武者風、草鞋は今にも切れそうで、灰色の薄着はヨレヨレ、股座から見える褌は茶色い、帯は荒縄を巻いている。これはコジキか何かだろうと思っていた。こんな奴に関わり合いを持ったなら、犯罪者のお仲間になりそうで、相手と距離を置く様に道の端を歩いていた。向こうからこちらに歩いて来る。そう、目の前3メートル手前まで奴は近ずいた。ふっ、こんな奴とは話もしたくないと思っていたのに、すれ違いざまに何を思ったか、急に俺の手を掴んだ。
「何なんだ!何をする。お前は強盗か。汚い手を離せ」
近ずくとやはり臭い。何日も風呂も入った事もないんだろう。だが、なかなか手を振りほどけない。
「力一杯に腕を掴みやがって、汚らしい。失せろ」
やっとの事で手を振り払い、相手と距離をおいた。すると汚らしいコジキのような奴が口をきいた。
「きっと勝てる。君もこないか」
何を思うのか、熱く俺に勧誘をして来る。何の事だかさっぱりわからない。
「こいつ馬鹿なのか?訳のわからない事を一方的に喋って来る。何を考えてるんだ」と心の中でつぶやいた。
俺は少々ムカつきながらも、このコジキの様な男に文句を言った。
「どういう意味だ。どうして俺なんだ。この俺に何が出来ると思っているんだ。何処に行こうと言うつもりだ。俺にわかるように言え!」
男は俺の言葉に何も言い返せずに下を向いた。
「すみません。俺、爺さん婆さんに鬼退治に行くと言って出てきたものの。道ゆく者に鬼の恐さを聞くに及んで、家来を連れて無ければダメそうに思えてきて。家来を探していたんです」
「それでなぜ俺なんだい。だいたい俺は強そうには見えない。自分から言うのもなんだが、そんなにかっこ良くもない」
「道を歩いてきて、向こうから来る人を見ていたんですが、あなたは俺と同じ目をしてると思ったんです。それで出会ったのは運命だと思い、あなたの手を握りました」
「馬鹿か、お前は。俺と同じ目をしているだと。コジキや気狂に言われて喜ぶ奴はいないわ。普通!わかってんのか」と叫んでしまう。
アホか、イヤ、絶対にアホだろう。関わり合いにはなりたくない奴だ。ここはすぐに離れよう。
「あっそう。俺は関係ないので、さようなら」
俺はさっさと立ち去ろうとするが、奴は俺の手を掴む。
「こら、触るな。このコジキが」
この言葉を聞き、男は悔しがった。
「ちょっと服装が貧しいだけでそんな言い方をして。人を何だと思っているんだ」
「だから、浮浪者か、コジキくらいにしか見えやしない。それに臭い。近寄られたくない」
そう俺が話すと男は泣き崩れた。
どうも道ゆく誰にも相手にされず、話しかけたら追い回され。爺さん婆さんから渡された少しばかりの路銀も使い果たし、持たされた吉備団子も腹が減って食ってしまった。着の身着のまま、見てくれの通り浮浪者になってしまったらしかった。
「鬼を退治しに行くと言う大義がある。多くの村人が鬼に苦しめられている。けど、誰も俺の言うことに耳を傾けてはくれないんだ。もう諦めて爺さん婆さんの家に帰る方がいいのか、そう思う時もあるが、何とかしたい。多くの者に馬鹿にされ相手にもされないが、見返してやりたいと思うんだ。けれどこれからどうしたらいいのか」
現実と自分の思いとの間が、相当かけ離れている事を思い知ったと見えて、男は苦悩していた。が、諦めきれていない様だった。
「さっさと諦めて帰ったら」
俺の答えに男は足にすがりつき、何とかして欲しいとすがるのであった。
「ハァ〜!何とかって、そんなレベルじゃぁ無いよな」
俺は浮浪者の様なこの男をどうすれば良いのか考えてみた。
「おい、何でも俺の言う通りするのか。文句は言うんじゃないぞ。いいか。わかったな」
「わかった。言われた通りにするから」
「それで何と呼べばいい」
「えっ」
「名前だよ。名前。わかった?」
「桃太郎」
「ふ〜ん、桃太郎か。俺はサイゾウって言うんだ」
「サイゾウさんですか」
「そうだ。サイゾウだ。そうだ、一緒に歩いて行くにも桃太郎、お前臭いから、あの川で体洗ってこい。綺麗にしてこい。ここで待っている」
「あの、サイゾウさん。川のそばで待っていてくれませんか」
「どうしてだ」
「あなたに逃げられたら困りますから」
「ハハハハ、引き受けると言った限りは逃げやしないよ。でも、用心深いのは良いことだ。わかった。川のそばまで降りてゆこう」
桃太郎の裸を見れば、小汚いだけじゃなく筋肉隆々だ。重量級ではないが中量級だな。まあ、真斗かタイガーマスククラスだろうか。力押しタイプではなさそうだ。ただ、こいつは強いかも知れないと思える体つきをしていた。もし、俺が格闘技のコーチなら、ジャーマンスープレックスなんかを教えたら世界チャンプになるかもと思えた。だが、やはり体重の不足は否めないと感じた。鬼と聞けば重量級の化け物で桃太郎の三倍くらいはあるのではと考え込んでしまった。こんな事で勝利は有るのか、桃太郎は生きて帰れるのか。俺は鬼の征伐など諦めさせるのが、人としての真っ当な道ではないかと悩んでいた。
「おい、桃太、頭も洗え、綺麗にな」
だいぶんと綺麗になったと思ったから川から上げた。道行きの支度をさせているとやはり臭い。これは服の臭いだったのかと気付いたのであった。やっぱり臭い、なので桃太郎に服も洗わせた。服を棒に括り付け、ふんどし一つで服を乾かしながら二人して歩き始めた。しばらく歩いて行くと服が乾いた様なので、桃太郎に服を着せていると、桃太郎が「勝てるかな」と呟いた。
「怖いんなら辞めておけ。勝てるかと自信のない奴はすぐに死ぬ。辞めるんなら止めない。それもお前の選択だ」
「だって、サイゾウさん。俺を見る目、哀れんでいません」
「確かに、お前、立派な体をしていると感心はした。でも体が小さいんだよ。鬼は大体お前の三倍はあると考えている。だから、勝てるかなぁと思うんだ」
「村の奴らや近郷近在の奴らには負けた事はないんです」
「そうだろうなぁ。お前の言う事は確かだろう。だが、お前が討ち果たす相手は鬼だぞ。わかっているのか」
「・・・・・・・」
「そうだろう。答えられないだろう。まあ、その辺は考えてみよう」
二人で話し合ったが答えらしきものは出てこなかった。少し道なりに二人で歩いてゆくと、身なりのいい侍が向こうの方からやってくるのが見えた。金糸銀糸に彩られた衣服とまではいかないが、それなりの身分を思わせる者だった。それを見て思いついた。桃太郎もこれくらいの服装をしてなくちゃ、誰も相手にならないだろうと。
「桃太、あれを見ろ。前からくるあの侍だ。アイツに喧嘩を売るんだ。奴め自分に自信があるから一人でやってくる。家来の居ないのが狙い目だ。あれくらいだったら桃太、お前でもやっつけてしまえるだろう」
「エッエッ。あんなに強そうに見える侍に喧嘩売るんですか」
「だから、お前はダメなんだ。強そうに見えるのは奴の服のせいだ。お前は強くてもそんな姿なので弱って見られているんだ」
「やられかけたら助けてくれるんですよね」
「アホ、誰が助けるなんて事するものか。奴にやられたら、鬼退治なんか自分には無理だったと、覚悟を決めて家に帰れ!すぐに。リタイヤするの、わかった」
「だってあんなに強そうに見えるのに。俺、殺されちゃうよ」
「殺されたらそれでお終い。君がいっちまったら、一応弔いぐらいはしてやるさ。この河原に埋めておいてやる。その後、俺は行くところがあるんだ。これで寄り道もなくなる。楽チンさ。それに桃太郎、君は泣く子も黙るあの恐ろしい鬼を退治するんだろう。チョットくらい強そうなぐらいで、怖がるとは。あれくらいの奴を黙らせられない様じゃ、鬼退治なんて諦めな」
「手に何もないのにどうするつもりです。相手は刀を差しているんですよ」
「ああ、そうだったね。ほれ!この棒でどうだ。これでいけ」
道端に落ちていた人の背丈ほどの木の枝を渡された桃太郎は、何て物を渡すんだと言う顔をしていたが、文句も言えずに頷いた。
震えながら手には棒を握りしめ桃太郎は、向こうからやって来る侍に喧嘩を申し込んだ。相手はその身なりの貧しさからか馬鹿にして、切り殺してくれると刀を抜き放った。間合いを詰めて切りかかった。
「エイ!」
気合いもろとも袈裟懸けにしようとしたが、桃太郎の棒の方が早く相手の頭を捉えて「ボカリ」と音を立てた。
「クッソ、このコジキが、殺してやる」
喚き散らす侍を桃太郎は棒で叩くまくり、とうとう伸ばしてしまった。
「ほう〜。なかなかやるな」
感心をしてたら桃太郎は颯爽と俺の方にやって来る。
「どうです。見ました。サイゾウさん」
「おい、お前はバカか。早く奴から服や刀を取り上げろ。そんでもってお前の服を奴に放り投げろ。やれ!」
桃太郎はこの言葉にビックリする。
「もし、そんな事をすれば俺は野盗や山賊と変わらないじゃないですか。やれないですよ」
「お前、口答えするのか。だったら俺はもうやめる。あばよ」
「ちょっと待ってください、サイゾウさん、そんなに怒らないでくれよ」
「ボケ!早く言われた通りやれ、早く奴から身ぐるみ剥いでしまえ」
桃太郎は言われた通りに服を取り替え、刀も腰に差し、見栄えはコジキから侍に出世した。路銀もたんまり持っていたので桃太郎はホクホクであった。
「桃太、なかなか似合ってるじゃないか。これで少しはお前の話を聞いてもらえる。家来も募集しやすくなった。さあ、行こうか」
桃太郎を連れて歩き始め、男を倒した場所から少し離れたところにまできた。後ろの方から人混みに混じって話し言葉が聞こえてきた。
「おい、この人、さっき決闘してのばされたんだよ」
「あんた大丈夫か」
「酷い奴だよねぇ。身ぐるみ剥いで行くんだもの。追い剥ぎだよ」
「でもこの男も大した事ないよ。この落ちてる棒で叩きのばされたんだよ」
「この棒で。相手は相当強かったんだね」
「でも命までは取らなかったんだから、良かったんじゃないのかね」
振りむいて見ていると、倒れていた男は頭をあげ、意識が戻った様だった。自分が素裸にされているのが分かると、狼狽してその場で座り込んでしまっていた。先ほど桃太郎が脱ぎ捨てたボロが目の前の転がっているのが男の目に止まり、それを手につかんで見たが、ただただ呆けた顔をして座り込んだいた。叩きつけられて身体中痛むのであろう顔は泣くでもなく、苦虫を噛み砕いた様な粗末な顔をしていた。裸ではいられないのでボロで泣く泣く着るしかなく、着るのを渋っていると、何を思ったか通りかかったコジキが同類と思い、衣服を着るのを手助けしていた。コジキに近寄られ、同類に間違われたことに思わずキレたその男は、人の良いコジキを追い立てた。
コジキもいなくなり、たった一人で立ち尽くす男は、何をするでもなく自身に起きた不幸を考え泣いていた。そうだ、多分。後ろ姿の奴の肩が少し震えていたから。そんな時、丁度通りかかった親切な旅人が何を思ったかコジキを哀れに思い、足元に落ちていた木の枝を渡してやっていた。ついさっき、決闘で自分を叩き伸ばした棒切れを手渡されると、奴は杖にしてフラフラしながら北の方に歩き去った。
桃太郎は勝負に勝ち、服装も立派になり、誰でもが目を見張る姿になった。
「どうだ、これで少しは周りから強い侍に見られる。さあ、これから家来を集めるんだ。分かったな。でも強いだけじゃあ家来にしちゃいけない。君とは違った能力を持ったものを集めるんだ」
「それはどうしてでしょうか」
「まあ君の出来ない事が出来るやつを探すのさ」
「分かった。掃除が上手い奴、飯を作るのが上手い奴とか?そんな感じ」
「違う違う。そんな事出来ても生活は楽になるが、鬼に勝てないぞ」
「ではどう言う輩を集めるのです」
「桃太郎、君は私がみる限り強い。だが、軽量急に毛が生えたくらいでそれだけだ。鬼はもっとでっかく強いぞ。それに敵がどこにいるのか、どうしているのか判らないとどうすることもできない。まずそう言った事を調べるものを探し出す事。その上でどの様に対処するのか考える者。君が一人なので一対一で対決できる様にサポートしてくれるものを探すんだ。見てくれは一応立派になった。姿形が君の強さを周りの者にも知らしめるだろう。だがそれだけでは君を見る者達に訴えかける力が弱い。もう少しインパクトが欲しいなぁ。そうだ!そこで背中には日本一の登りもつける様にしてみよう。誰が見ても日本一の侍だと主張するんだ。出会うものは君の姿に納得するさ。これで家来の成り手が現れるだろう。挑んで来る者は全てやっつけてしまう様に。それともっと良い服を着た者と戦い、勝って服を取り替え、グレードアップするのも悪くない。刀だって上等なものを挿している者と会えば、決闘をして取り替えても良いんだ」
「そうですか。分かりました。これから南の方に行こうと思います。あっちの方には村が沢山あると聞いていますので、あの山の方にも行ってきます」
「それと家来と目的は同じでなけりゃダメだよ。家来募集に関しては良く考えてね。それで無いと君は追い剥ぎか山賊になってしまうよ」
桃太郎は意気揚々と道なりに行きました。
サイゾウは桃太郎と別れて道を進んでいくと、道が二股の別れており、サイゾウは川の見える方を選んで進んで生きました。先に大きな桜の木が見えてきた。桜の大木のすぐそばに一軒の茶屋が有るのが見えた。桜の樹の下には赤い毛氈を引いた台が六台ばかりあった。桜の花びらが風に吹かれてヒラヒラと舞い散り、風情が良さげで大いに気に入ったので、川に一番近いとこに腰をおろし茶屋に声をかけた。
「ここいいですか。お茶を頼みます」
「は〜い」
何とも美しい娘が出て来てお茶を出してくれた。金髪緑眼の娘で木綿の和服を着ている。あまりに服装が合わないので戸惑っていたら、娘はニコリとして言うのであった。
「名物の御手洗団子はいかがですか。今注文してくれると桜餅が一個付いて来ます」
サイゾウはこの娘かなりやるなと思いながら、その美しい声と笑顔に負けて「もらおう」と注文していた。
「美味しいですよ」
娘の言葉は、グイグイとサイゾウの脳裏に響いている。
「俺はマーケッターさ。販売員の売り言葉に感心する事は良くあるが、相手の言う通りに載せられたことなど今までに無いことだ。どうしてだろう」
注文を何も考えずに了承してしまった事をサイゾウは何故かと考えるのであった。
「なぜだ。この俺がこんな小娘の言葉に踊らされるとは。何時もならば団子の材料や謂れなどを確認してから注文を決めるのに。どうしてこうも簡単に反応してしまったのか。わからない」
女は注文を受けると手際よく団子を運んできた。礼儀作法に適った方法で団子を置き、すぐに次の客の接客を始めた。出来る店員だなぁと感心していると、店前の道を北の方からやってきた三人の旅人に、「お越しやす」と件の娘が声をかけた。
「おい、お茶でも飲もうか」
一人がそう言うと、後の二人は頷き、赤い毛氈の上に腰を下ろした。
お茶を飲もうと提案した旅人が座って他の二人に言う。
「なぜ茶を飲む気になったんだ。急ぎの用事があったのに」
「アホ、お前が飲もうというたんやないか」
「そうや、あんた、あかんたれやなあ」
「そんな事言うたって、お前らも同意したやないか」
なぜかお互いに相手を非難する三人だったが、女がお茶を持って来て、団子を勧めると、喜んで注文をしていた。三人は何故か釈然としない様子でお茶を飲み、運ばれて来た団子を食うと急いで茶店を後にした。
「やっぱりな。アイツらも納得してない様子だ。何故だろう」
少し不満を抱きながら小川を眺めながらお茶を飲んでいると、店の奥から女を呼ぶ声出した。
「ローレライ。ローレライ。早くおし」
お茶を用意した婆さんが早く客に出す様に急かす声であった。
この声を聞いて、サイゾウはそうだったのかと納得をしていた。
この茶店は繁盛していた。道ゆく旅人が通り過ぎる事なく必ずこの店に入るからである。娘が声をかけると、道ゆく旅人は必ず入店する。腰を下ろして娘が茶を運んで来ると、必ず饅頭を提案する。そうしたら全員、みたらし団子と桜餅を食ってゆくのである。
サイゾウはローレライに尋ねてみた。
「なぜ君が、こんな茶店で働いているんだい」
「なぜって、答えなきゃいけない。今、忙しいんだけど」
「いや、嫌ならいいけど。興味あるから」
「まあいいわ。他言無用よ。分かった」
「ああ」
「勝負に負けたのよ。あの奥にいる婆さんに」
「へ〜え。あの婆さんにねえ。強そうに見えないがねえ」
「そうなのよ。私、あの道を北に向かって旅してたの。でもここまで来て、ものすごくお腹が減って、この茶店でお茶と団子を食べたのよ。それで私の能力を使って、またタダで済まそうと考えたの。それであの婆さんに勝負を持ちかけたのよ。もちろん婆さんは受けたわ。私、しめたって思ったわよ。けど、負けちゃったのよねぇ。こんなことってあり得ないわ。ず〜と負けたことなんか無くて、ここまで無敗を誇ってたのよ」
「ふ〜ん。でもどんな勝負をしたんだい」
「私の手を掴む勝負よ。大概のものは私が声をかければ向こうに行ってしまうと言うのに、あの婆さんと来たら、私の手をしっかりと握りしめ、働いてもらうよと言ったのよ。それからここの店員をしてるわ。行き交う旅人に声をかけ、茶店に呼び込み団子を売りつける。簡単な仕事だけど、私、独りきりなの。これだけの客を切り盛りするのは大変よ。それに呼び声も決められてるし、お越しやす、とか、おいでやす。団子やお茶も出す方法や出し方を言われた様にするか、あのババアときたらちゃんと見ているのよ。間違った時なんか汚い言葉で喚き散らすのよ。恥ずかしいたらありゃしないわ」
「なるほど。そうか、お前さんも大変だねぇ」
茶店の中には背の低い着物姿の婆さんがいた。湯を沸かし続け、忙しく動いていた。団子もちゃんと皿に乗せ用意してる姿を見ていると、こちらに背を向けている時にはお茶を、こちらを向いている時には皿と団子を数えて触っていた。
サイゾウは婆さんをみて、ローレライが敗北した理由がわかり納得した。
サイゾウはお茶屋を後にした。小川に沿って道を行く事にした。
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