第14話 自主企画を上手く活用しよう
第三話を投稿し終えたところで、僕はふと画面右の『開催中の自主企画イベント』の欄に目を向けた。
自主企画。それはサイトを利用しているユーザーが立ち上げたユーザーのためのイベントである。
内容は千差万別あるが、その多くは企画に参加した作品が少しでも多くの人の目に触れることを願って作られたものだ。
……へぇ。今はこんなイベントをやってるんだな……
何気なく開いたイベントの一覧を見ていると、アオイが反応を示した。
「自主企画?」
「ユーザーが開催してるイベントだよ。自慢の小説を応募して、色々な人に見てもらおうっていう……宣伝の場所みたいなものかな」
僕は自主企画には積極的に参加する方だ。
それは、自分の作品を多くの人に見てもらうため……でもあるが、面白いと思える作品を発掘するためでもある。
まだ世間に注目されていない名作を発掘するのは殊の外楽しいものだ。
ふうん、とアオイは鼻を鳴らした。
「参加するの?」
「しようかな、とは思ってるよ。その方が人の目に付く可能性が上がるしね」
ただし、自主企画への参加にはそれなりのデメリットもある。
自主企画に参加した作品は、企画に参加している間はランキングの集計対象外となってしまうのだ。
それはコンテストランキングも同様なので、コンテストに参加している場合や参加しようと思ってる場合は、そのことをよく考慮する必要がある。それでも少しでも人に読んでもらいたいと思ったなら、参加するといいだろう。
僕は今書いている小説をコンテストに応募するつもりで書いているが、コンテストの募集が終了するのは二ヶ月は先のこと。一ヶ月を目処として考えるなら、自主企画に参加するのは十分にありなんじゃないかと思っている。
それにしても……随分と自主企画が立てられてるな。
いつ見ても此処は賑わっていると思うが、今はそれに輪をかけて多くの自主企画が並んでいる。
さて……どれに参加しようかな。
自分の作品を売り込むのが目的で参加するのなら、なるべく新しく立てられたばかりの企画を選ぶのがいい。その方が人に注目されやすいからだ。
特に企画主が参加作品を読みますと宣言しているタイプの企画の場合は、多くの参加者が集まりやすい傾向にあるから、早く参加した方が自分の作品を読んでもらえる確率が上がる。
読み合いましょう、というタイプの企画の場合は、とにかく作品の投稿頻度を上げることが重要だ。作品が投稿されればリストの上位に作品名が載るから、その分人目に付きやすくなるのだ。
因みに僕が個人的に狙い目だと思っているのは、参加人数が制限されているタイプの自主企画である。
参加人数が少なめに設定されている自主企画の場合は、企画主が参加作品全てに目を通そうと考えていることが多いから、少なくとも企画主には作品を読んでもらえることが確約されている。それ以外にもまめに企画に顔を出す参加者がいる場合、その人にも注目してもらえる可能性がある。
僕がそういうタイプだから。自分が参加した企画をまめにチェックしているユーザーは結構多いのだ。
「そうだな……これなんていいかもな。『二十作品まで。異世界転生ものじゃないファンタジーを募集します』」
僕が目を付けた自主企画は、割とよくあるファンタジー作品募集の内容で参加人数を制限されているという内容のものだった。
企画を立てられてまだ一時間も経っていないというのに、既に十人もの参加者がいる。
こういう内容の企画はすぐに定員に達してしまう。参加するなら今がチャンスだ。
僕は作品の情報編集画面を呼び出して、作品を自主企画に登録した。
これで……少しでも多くの人に読んでもらえるといいな。
ふう、と息をつく。するとそれを嗜めるようにアオイが言ってきた。
「イベントの力に依存するようなことはないようにね?」
「……それは当たり前だよ。自主企画に参加したから必ず作品が注目されるってわけじゃないんだから」
結局、自分の作品が人に注目されるかどうかは自分の努力次第なのだ。
努力をやめてしまったら、その作品はそこまでなのである。そうならないためにも、これからも作品の売り込みは続けていくつもりだ。もちろん更新もね。
それならいいんだけど、とアオイは苦言を呈した。
「人間、自分の非はなかなか認めないものだからね……」
何だよ、それだとまるで僕が作品の注目度が上がらないのを自主企画のせいにしているみたいな言い方じゃないか。
……まあ、いいか。
僕は肩を竦めて、作品の更新を宣伝するために机に置いていたスマホを手に取ったのだった。
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