だって素敵な笑顔だと思ってしまったんだもの
16歳の,夏.
じめじめとした暑さに溶けそうになりながら,アルバイトに向かっていた.
ほんの数週間前に地元の大手チェーン店のアルバイトに合格して,既に初出勤を終えて3回目か4回目かの出勤をしているところだった.
周りはみんな大学生で,高校生はたった3人だけの,そんな環境.
女子高生が受かったとなると男子大学生たちは黙っていないみたいで,出勤を重ねる度にはじめましての人に「お,噂のJK!」と声をかけられていた.
-今日は,誰に言われるのかな.
自分のことは可愛いと思ったことはないし,おしゃれに興味があるわけでもない.
高校生になったはいいけど,地元でアルバイトという予定程度ではお化粧なんてわざわざしないから,色気ももちろんない.
けれどそれでも,大学生の先輩たちは私をどことなく特別扱いするの.
今思えば,いわゆる”JKブランド”ってやつだったのかもしれないなあ.
「おはようございます.」
4桁の暗証番号を入れて,重い扉を開けた先.
まだ誰もいないと思っていたバックヤードに,誰か,いた.
「おはようございます...誰...?」
「あ,あの,この前アルバイトに受かって働き始めた...」
「ああ!」
まだ何も言い終わらないうちに,相手が明るい声で,遮った.
「あの噂の高校生ちゃんや!」
細い目をさらに細めて,あなたはキラキラと,笑ったの.
これが,今も忘れられないあなたとの,出会い.
あなたに初めて会ったとき,まだスマホが普及し始めて1年ちょっと.
lineのサービスがようやく定着してきたころ.
太めの真っ黒な眉毛,線のような細い目,就活が終わってないことを思わせる黒い短髪,私よりはるかに背の高い,あなたに,初めて,会った.
「噂の高校生ちゃん,仲良くしてね.」
元々,線のような目の人が笑うと,目って,どこかいっちゃうんだ.
年上の方なのに,それがすごく,可愛らしく見えて,
あぁ,この人の笑い方,なんだか好きだなあ,って
はじめましてで,そう,思ったの.
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