現在も続く。








『明日から卒業旅行で北海道行くけど、白い恋人好きだったよね?』




 疲れて帰宅したわたしの携帯に、一通のLINE。



 彼氏の友貴ともきから。




 …冷戦中でも、お土産は買ってきてくれるのか。


『何もいらないから楽しんでおいでー』と、返事を打ちつつ、そんなことを思う。




 前に少し触れたけど、わたしと友貴は数ヶ月前から上手くいっていない。


 交際2年半。彼はまだ大学4年生。年齢でいうと一つ下。




 2年間は大きな揉め事もなく、本当に仲良くやってきた。



 わたしの家族のことも、友達のことも、


 春田さんが職場での癒しになっていることでさえ話せる、友達みたいな彼氏。




 頭に血が上ったわたしから、「別れ」という言葉を口にすることはあっても、


 友貴からは決して別れを匂わす言葉一つ発されることはなかった。



 それが半年前、ささいな喧嘩の中で友貴の口から


「俺たち付き合わないほうが良かったね」と、切り出された。



 そこから、何となく距離を置いてしまっている。



 もう1ヵ月以上会っていない。



「…明日頑張れば業後は飲み。次の日休み。頑張ろ。」


 学生との生活の差を羨ましく思いながら、そう言い聞かせた。






 ◇◇◇






「七生と彼氏今そんな感じなんだー。意外だわ。」


「そだよー。わたしも予想してなかった展開だよ〜」



 金曜日の仕事を終え、向かうのは地元横浜の居酒屋さん。




 少ない異性の親友、翔太郎しょうたろうと恒例の近況報告会。




「春田って先輩とはいい感じなんだ?」


「いや、全然いい感じとかじゃないよ!!まずわたしなんて相手にしないと思うし。

 ただ、目が合うと嬉しいな〜とかって程度!」


「いいねーーー恋だねー」


「それで本来の彼氏と別れてたら世話ないけどね…」



 翔太郎とは高校の時からの友達で、


 成人してからアルバイト先で偶然再会し、定期的に飲みに行っては、近況を話し合う。



 お互いカラオケが好きなので、オールをしてしまったり…ということもある仲。




「話聞いてる感じ、七生は春田さんのこと普通に好きっぽいけどね」


「…まぁ、確かに興味はあるのかも。でも友貴の存在は貴重だなって思うよ」


「確かに七生の彼氏君ほど誠実な男珍しいと思う」



 友貴は周りも認めるいい彼氏。



 タバコもギャンブルもお酒も、もちろん女も基本嫌い。



 わたしにはすごく甘くて、自分には厳しい。


 約束は絶対守るし、嘘が嫌い。家族を大切にできる人。



「結婚するにはもってこいの人だと思う。


 現実、就職してからじゃないと最上案件とは言えませんが。」



「そうだなー。勤め先大事だよな実際。そういう面では年齢的にもスキル的にも春田さんの方が結婚向き案件なんじゃない?」


「いや〜だって5年付き合ってる年上の彼女がいて結婚しないんだよ?しかもめっっっちゃ遊んでるみたいだし、絶対結婚して縛られたくないとか、遊び足りないとかってタイプだよ。」




『ヴーヴーッ』


 好き勝手言っているわたしのiPhoneが震えた。



 画面には『春田 壮也』の4文字。




「?!えっ。春田さんからだ!」



【前話してたイヤホン、在庫ないかもね】


 そんな文章と、画像が一枚添付されてきた。



「なんだって?????」


 興味津々で翔太郎が画面を覗き込んでくる。



「前、春田さんが持ってたイヤホン欲しいんですって話したことがあって、その在庫が品薄だよーって!スクショと一緒に!」



【わざわざ調べてくれたんですね!ありがとうございます^ ^

 今度買いに行こうと思っていたのに残念です。】



 つい、速攻で既読をつけて、速攻で返信してしまった。





「あ。こういう時ってすぐに返事したらだめだったか。」


「駆け引きってやつだね。てか噂をすれば春田さんからLINEとか。…遊び相手候補じゃん?」


「やめてよ怖いな!ちょっと久しぶりに気合い入れてLINE返さなきゃ」



 純粋に嬉しい気持ちと、春田さんを警戒する気持ちが混ざって、複雑な心境。



 でも、職場の先輩だし…


 と、翔太郎にアドバイスをもらいつつ、LINEはその日から始まった。









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