涙はほろびの

 彼女の涙は雨露に濡れたように美しい植物になり、星屑のように煌やかな宝石になった。

 村人は彼女に涙を流してもらうため、魂を震わすキタラの調べを奏で、美しく心憂いトラゴイディアを披露した。そのたびに彼女は、青い両眼から澄みきった涙を落とした。

 あるとき誰かが、感動させるよりも傷つけたほうが手っ取り早いと言い出した。賛成した村人が彼女を罵倒し、イチジクの枝で打ち据えた。彼女は泣き叫んで大量の涙を流した。

 反対する者の声が消えて久しい頃、彼女の涙に濁りが出始めた。村人が異変に気づく間もなく、涙は毒草になり、有害な蒸気を発する鉱石になった。

 すっかり静まりかえった村の真ん中で、彼女は再び、澄んだ涙を流し続ける。

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