灯す人
お気に入りの黄色いブランケットにくるまって、少年はいつもの場所に腰を下ろした。パチンと指を鳴らすと、遠くの暗い箱にぽわん、あかりが灯る。
少年は静かに微笑みながら、パチン パチンと指を鳴らし続ける。
その音が空に響くたび、冷たい水滴がつたう箱に暖かな空気が満ち満ちて、静まり返った箱から笑い声がこぼれ出す。
全ての箱に暖かな光が溢れたのを見届けると、少年は腰掛けていた場所からするりと降りて振り向いた。その視線の先にぽつんとひとつ、暗い箱。
「ああ」
少年は目をぱちくりさせると、掌を見下ろし、かすかに眉尻を下げて笑った。
「今日もまた、僕のぶんを残すのを忘れた」
琥珀色の三日月が、少年しかいない箱を照らしている。
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