不確かな約束

 ホテルを出た後、あなたは煙草を吸いながら「じゃあ」と言う。私は微かに諦めを含んだ笑みを浮かべて「またね」と言う。

「離婚するから、来年まで待って」

 そんな不確かな約束に縋っているうちに、もうすぐ季節がひと回りしてしまう。


 今日も「じゃあ」と言った彼が、口を開こうとする私を遮った。

「結婚してくれないかな」

 寒さ以外でも、身体の震えが止まらなくなることがあると知った。

「えっ何、何で笑ってるの」

 不安そうな声。俯いて肩を震わせる私を見て、笑われていると思ったらしい。

「混乱してるの」

 突然すぎて、信じられなくて、どうしようもなく、幸福で。

「諦めないとって、思ってたからっ」

 抱き締められた胸からは、煙草の匂いがした。

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