case.9 美人

「ねえ、私の服に汚れとかタグ付いてない?」

 君は僕の前で突然くるりと回転してみせる。細長い手足はそれだけで映える。そして、ワンテンポ遅れてなびく髪の毛は太陽の光を柔らかく反射する。ここにだけスポットライトに照らされたステージモデルがいるようだった。

 君がそう言い出したのは、すれ違う人が君に見惚れて、振り返ったりしたからだろう。

「大丈夫。何も問題ないよ」

「ほ、ほんと?」

「うん。今日もとても綺麗だ」

 君は照れたようにはにかんだ後、

「それは隣にいつも君がいるからだよ」

 と、僕の心を掴んで止まない、誰もを虜にするような笑顔を向ける。

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