case.6 セクシー

「はぁ……」

 君のアンニュイなため息を見るのは今日だけで何回目だろうか?

 普段はまとめている髪を下ろしていて、前に垂れてくる長く艶のある黒髪をゆっくりかきあげる。その度に斜め後ろの席にいる僕からはうなじが見えてドキッとしてしまう。

「今日はどうしたの? ため息ばかりついて」

 君は無言で僕を見つめる。

「そういえば、今日は髪の雰囲気違うね。やっぱり下ろしてるのもよく似合うね」

「やっと褒めてくれた。君が下ろしてる方がいいって言うからしたんだよ」

 僕にだけ送られるその笑顔はいつにも増して大人っぽく見えた。それはきっと髪型のせいだけじゃないはずだ。

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