弁当箱

「毎日毎日お弁当で、飽きていないかい?」

空の弁当箱を受け取りながら、恋人に尋ねる。

「自分の作る弁当で、果たして彼が満足してくれているのだろうか」と、ふと不安になったのだ。

恋人は大きな目を何度も瞬くと、ぶんぶんと首を横に振った。

「全部手作りのお弁当、嬉しいです。大好きです。お弁当も……」


――貴方のことも。


ぎこちない仕草で、恋人が抱きつく。

恥ずかしがり屋な恋人の、精一杯が何より愛しい。

汗の匂いと寒空の匂いの混じる身体を抱きしめると、幸せに包まれてゆくような気がした。


「明日のお弁当、何にしようか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る