枯れない花

青年の営む花屋には、小さなショーウィンドウが備え付けられている。

四季折々の花々が作り上げる世界は物語のようで、見る者の心を虜にした。

青年曰く、これは「魔法」――花に特殊な加工を施し、美しい状態で保存した”枯れない花”なのだそうである。


その花の花弁を指先で撫でながら、青年は呟いた。

「羨ましい……一番綺麗な姿で、いつまでも、大切な人の側にいられるなんて」

出会った頃よりも幾分痩せた青年の肉体。

何気ない一言が、真実味を帯びて聞こえる。


青年の生命の花弁は、儚く儚く散ってゆく。

「永遠」などない、と嘲笑うように。


「私の生命の一部を切り取って、彼に与えることができたなら……」


私は己の、無力を嘆いた。

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