夕餉

白飯と味噌汁、それから肉じゃが。

少々見栄えは悪いが、我ながら良くできた、と思う。

「どうですか?少しは上手くなったでしょう」

男は青年に微笑みかける。


肉じゃがを摘み、味噌汁を啜り、溜息を溢した。

ほうれん草のおひたし、だし巻き卵に焼き魚。

彩りの鮮やかな食卓が、恋しい。


髪を高く括り、エプロンを身に着ける。

可憐で儚い、私の……恋人。

その身体を、何度抱きしめたことか。


「やっぱり……貴方のようにはできませんね」

箸を置き、静かに首を振った。


「明日は、コロッケにしましょうか」


四角形に縁取られた世界の中、青年は十年前と変わらぬ姿で、笑っている。

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