髪留め

「え、俺に? くれるの?」

包みの中身を手に取った青年は数度瞬きをすると、くすくすと笑い出した。

「俺、もう大人だよ?」

くまを象った飾りの付いた髪留めを指先でぶらりとさせて、彼は言う。

「気に入らなかったのなら、申し訳ない……」

「ふふっ、先生って……面白いね」

青年はお腹を抱えながら、目尻に溜まった水滴を人差し指で掬っている。

「処分、します」

青年の手から、髪留めを取り上げようと手を伸ばす。

「だめ、これがいい」

青年は私の手をひらりと躱す。

それから、わざとらしく首を少しだけ傾げて言った。


「もう髪、短くできないね」

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