忘れ物

「晩御飯、何にしようか」

「そうですねぇ、卵がたくさん買えたので……」

「親子丼、かな?」

年下の恋人は、嬉しそうに頷いた。

買い物へ出掛けた帰り道。

片手に一つずつ袋を提げ、もう片方の手は自然と繋がれる。


「そうだ、忘れ物」

通りの向こうのドラッグストアを指差すと、

「洗剤、切らしてました?」

恋人は首を傾げる。

「コンビニでも良いのだけれど……」

ぼそりと呟くと、恋人はぴたりと足を止め、大きな目を幾度か瞬いた。


「俺っ……」

彼は耳の先まで林檎色に染め、


「昨日……買ってきました、から、……引き出しの一番上……いつもの場所に」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る