第4話象
目が覚めてから少し経った頃、エマが餌を持って来ました。すると餌の匂いに気付いて小さなネズミがジョニーの顎の下から、ちょこっとだけ顔を出すと、エマと目が合ってしまい、慌てて顎の下に隠れました。小さなネズミを見つけたエマは「可愛いお友達が出来たのねジョニーお友達も一緒に食べてね」と言って餌を置くと、エマは檻の外でしゃがんで見ていました。小さなネズミは、お腹が空いていたらしく、もう一度ちょこっとだけ顔を出すと、エマが小さなネズミに「ネズミさん、ジョニーは気が小さいけれど、とても優しい子だから、これからもよろしくね」と言うとエマの気持ちが通じたのか、小さなネズミはジョニーのヒゲをツンツン引張ってから餌を食べ始めました。続いてジョニーも餌を食べ始めると「お友達の名前も私が付けちゃってイイかな?」とエマが言いました。「女の子っぽいからセティがイイかな、 今日から君の名前はセティだよ」と言いました。餌を食べ終わるとセティがジョニーの顎の下に潜り込んできました。ジョニーもセティと一緒に眠ろうとしましたが、先程の夢の中の世界が気になって、なかなか眠れませんでした。もう一度眠る事で、あの夢の中へ行く事になるのかも知れない、と思うと、ちょっとした緊張感がありましたから、すると、そこへサーカス団の団長がジョニーを迎えに来ました。「ジョニーそろそろ出番だよ、今日もよろしく頼むね」と言いながら、ジョニーと一緒にステージへと向かいました。ステージに着くと、そこには先に象が居ました。この日、象は少し落ち着きがありませんでした。ジョニーは最近は熊と一緒のステージが多かったので、久々の象と一緒のステージで少し緊張していましたが、ジョニーは、いつも通り細い橋の上を歩いたり後ろ足だけで立ち上がったりの演技を行いました。象の演技が始まり団長が象の4本の足が、やっと乗る位の小さな台に象を乗せようとした時、象は嫌がりましたが、団長が尚も無理やり象を乗せようとしました。すると象は団長を鼻で跳ね飛ばしフェンスにぶつかって倒れた団長に向かって突進しました。象使い2人が止めに入りましたが
興奮している象は象使い2人でも押さえる事は出来ませんでした。尚も団長の元へ近寄ろうとする象と団長の間にエマが立ち塞がりました。エマは両手を広げて象の目を真っ直ぐ見ました。象は動きを一瞬止めましたが、次の瞬間エマに向かって走り出しました。が、その時ジョニーが、象の鼻先に噛みつきました。そこで象の足は止まりましたが、鼻を思いきり振り上げると、ジョニーの身体はフェンスに叩きつけられました。すると象はすかさずフェンスの前に横たわるジョニーの腰の辺りを踏みつけました。象がさらに踏みつけようとした、その時ジョニーの身体の上にエマが覆いかぶさりました。エマにとってジョニーは、ジョニーがまだ幼い頃からずっと育ててきた子供の様な存在でしたから、ジョニーの上に覆いかぶさるエマを見た象は2、3歩後ずさりすると、そのまま大人しく檻に戻されました。エマはジョニーの腰の辺りに手をやると、そのまま泣き崩れました。団長はエマに何と声をかけたらいいのか判らず、その場に立ち尽くしていました。やがてジョニーが檻に戻されても、エマはジョニーの側を離れようとはせず、ジョニーの身体をさすりながら泣き続けました。その後、半日ぐらい経った頃、見かねた団長がエマの肩に力無く手を置くと、エマを檻の外へ連れて行きました
。その晩ジョニーは一睡もしませんでした。セティもジョニーの側で朝まで一睡もしませんでした。翌朝エマが餌を持って来てもジョニーは全く食べようとしませんでした。エマが「ちょっとだけでも食べて」と口元に餌を持って行ってもジョニーは食べる事が出来ませんでした。餌も食べられなくなったジョニーの姿に、エマは目にいっぱい涙をためながら、檻を後にしました。セティはしばらく餌を見つめていましたが、食べようとはせず、ジョニーの顎の下に潜り込んできました。
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