第2話青い丘
すると、その日ジョニーは、とても不思議な夢を見ました。夢の中のジョニーは人間の青年でした。目の前に大きなゲートが見えました
。ゲートの前では小柄な女の子がチケットを買っていました。ジョニーは、その女の子を見た瞬間、ジョニーにとって、とても大切な人だという事は判りましたが、女の子の名前が、どうしても思い出せませんでした。女の子は振り向くと「ジョニーこっちこっち入るよ〜」と言うので、ジョニーが側に行くとチケットを手渡してゲートの中に入って行きました。ジョニーも女の子に続いて中に入ると
、目の前には物凄く広大な公園が広がっていました。「ねえジョニー素敵な所でしょ、一度ジョニーと来てみたかったんだ」と女の子は言うと、ジョニーの手を取り少し坂を下った所に有る建物へと向かいました。建物の中には沢山の自転車が有りました。「ジョニーの自転車コレね」と女の子が言うのでジョニーが側に行くと「ジョニーもサドルとハンドル合わせて」と言いながら、女の子は手馴れた手つきで、サドルとハンドルを合わせていました。ジョニーも見よう見まねで合わせると、女の子は「ジョニーついて来て」と言うと、さっそく走り始めました。ジョニーも慌てて跨ると、子供の頃に自転車に乗っていた記憶が蘇ってきました。公園の中の整備されたサイクリングロードは、軽いアップダウンと緩やかなカーブがあって、自転車を走らせるには、とても楽しい道でした。しばらく走ると、海の見える所に出ました。2人は自転車を停めて、しばらく海を眺めていました。海は初夏の日差しを受けてキラキラと輝いていました。海風が女の子の亜麻色の髪と淡いブルーのワンピースを揺らしていました。ジョニーが女の子の顔をボーッと見つめていると
女の子がパッとジョニーの方を振り向きました。ジョニーは凄く慌てふためくのと同時に女の子の名前を聞いておかなくてはと思い「あの〜・・・」とまで言いかけた時、女の子が「ジョニー行こう」と言いながら自転車に跨りました。ジョニーが「何処へ行くの?」と訊くと女の子は「スッゴクイイ所、ジョニーもきっと気に入るよ」と言って走り始めました。ジョニーも自転車に跨ると慌てて後に続きました。その後、結構走ったなとジョニーが思った時、女の子は自転車を道の端に停めると、チョット不機嫌そうに、地図を見始めました。ジョニーも女の子の隣に自転車を停めると、女の子に「どうしたの?」と声をかけました。すると女の子が「移動したのかな」と独り言みたいに呟きました。ジョニーが「移動したって何が?」と尋ねると、「丘」と言う返事が返ってきました。丘は移動しないんじゃ無いのかな〜とジョニーは言いそうになりましたが、チョット不機嫌そうな時に、そんな事言ったら間違いなく怒らせてしまいそうで、ジョニーは言わない事にしました。女の子は地図と周囲の景色を何度か見比べると「ア〜判った〜やっぱりさっきの所右で良かったんじゃん」とか言ったので、やっぱりって?とジョニーは言いそうになりましたが、確実に怒らせてしまいそうなので、ジョニーは言わない事にしました。女の子は「ジョニーこっちこっち」と言うと今来た道を戻り始めました。ジョニーも女の子に続いて少し走ると、女の子は案内表示板を見つけました。案内表示板に目的地の丘を見つけると、女の子は「ジョニー飛ばすよ〜」と言うと、いきなりメチャクチャスピードを上げましたが、直ぐに道路から外れそうになって「キャー」と言う声が聞こえました。ジョニーは、ちょっと速すぎじゃ無いのかな〜と思いましたが、女の子の背中から楽しい気持ちが伝わって来てジョニーも一気にスピードを上げました。すると少し走った所で開けた場所に出ました。大勢の人が歩いていて、皆にこやかな表情をしています、女の子は端に自転車を停めると「ここから歩きだよ」と言って大勢の人が歩いて行く方向に歩き始めましたが、ちょこちょこっと戻って来て、ジョニーの手を取り「行こう」と言って歩き始めました。丘に向かって歩いて行くと、なにやら行列を見つけました。女の子は、そこで足を止めると「ジョニー私ソフトクリーム買って来る〜」と言って行列の方へ走り出しました
。しばらく待っていると、女の子が目をキラキラさせながら、淡いブルーのソフトクリームを買って来ました。女の子が「ジョニー一緒に食べよう」と言って「ハイ」と差し出すので、ジョニーが一口食べてみると、とても爽やかな味がしました。ジョニーと女の子は1つのソフトクリームを交互に食べながら丘を目指しました。丘には一面に小さなブルーの花が咲いていました。「ネモフィラって言う名前の花だよ」と女の子が教えてくれました
。丘一面に咲くネモフィラ達が初夏の風に揺れていました。女の子は丘の途中でしばらくしゃがんで花を見つめていました。やがて女の子はスクッと立ち上がると、スキップする様に丘を登り始めました。すると突然女の子が倒れました。ジョニー一緒に急いで駆け寄ると「私小さい頃から膝の具合が良くないの、手術をしてもちゃんと治るか判らないから手術はしたくないの」と女の子は寂しそうに笑いながら膝と手に付いた砂をはらいました。その時ジョニーはどうしたらいいのか判らず女の子の楽しい気持ちが萎んでしまわない様に、ただただ祈りました。女の子はジョニーの気持ちを察したのかジョニーの手を取りニコッと笑うと「行こう」と言って登り始めました。やがて頂上に着くと目の前に海が見えました。遠くを行く船の船体には太陽が描かれていました。ジョニーは空を見上げると、青く澄んだ空に、くっきりと白い雲が行く様は、夏がすぐそこまで来ているのを感じさせました。海からの風に吹かれていると、何処からか鐘の音が聞こえてきました。女の子とジョニーが鐘の音のする方へ歩いて行くと、アーチ状の銀色の柱に鐘がありました。前に人が並んでいたので、ジョニーも女の子と並んで一緒に鐘を鳴らしました。するととても澄んだ音色が響きました。鐘を鳴らした後、女の子はとても嬉しそうでした。女の子はジョニーの手を握り、海を見つめながら思っきり深呼吸すると「ねえジョニー蟹食べ行こうか?」と言いました。ジョニーは突然蟹と言う言葉を聞いたので、「蟹?蟹と言ったら蟹の事だよね」と脈絡の無い事を言ってると「よし行くよ」と言って女の子はジョニーの手を取り歩き始めました。ジョニーが「エッ何処へ?」と訊くと「カニ〜昨日調べといたから大丈夫」と言って駐車場へと向かいました。
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