×負けイベント ○詰みセーブ (後編)
(あらすじ)
ところで故・国王バラムの娘たち、つまり王女は36人いるが
いずれも美しく、妙齢である。
36人の王女達は前国王の仇を討った者を次の国王とする習わしに従い、
未来の国王候補として強者をパートナーとし、魔王討伐に赴くこととなった。
後の世に言う “バラム・アヴェンジ” の幕開けである。
システム:「知らないところで変なストーリーが・・・。」
・・・
システム:「勇者は村に戻った。」
「あ、見ろ!勇者様だ!」
「勇者様ー!」
・・・
「私が村長です。」
システム:「勇者は村長の家に招かれた。」
「いやー村長さん、受けた依頼、この勇者がきっちり完遂して来ましたよ。」
システム:「・・・ボスのお情けで。」
「ちょ、余計なことは言わなくていい!」
「なんと・・・勇者様、この短時間でよく・・・!」
「短時間?」
「勇者様が村を出発されて、まだ小一時間程しか経っていませんぞ。」
「あれ、そうだったか?俺は10年くらい戦ってる感覚だったわ。」
システム:「・・・体感時間ではね。」
「さすがは勇者様、ご謙遜を。ではきっと巨人を倒すのに
“じゃしんのぞう” が役に立ったのですな。」
「・・・は?」
「え、村を出るときにお渡ししたではないですか。
『この村に伝わる像を使えば、巨人の力を弱め、
戦うことができるようになる』
と。」
ざわ・・・
俺の中で何かが繋がってゆく。
「もしかして・・・その “像” ってこれですか。」
システム:「勇者はインベントリから “へんな置物” を取り出した。」
「え・・・勇者様、なぜこれがここにあるのですか?
これを使わなければ単眼の巨人は倒せないはず・・・!?」
「えっと・・・なんかいけそうだったから使わずに倒した感じ・・・かな?
ははは。」
村人達がざわつく。
システム:「・・・勇者さん?」
「は、はい何でしょうかシステムさん・・・。」
システム:「これ、もしかして “イベントアイテム” ってヤツでは?」
「もしかするとそうだったりするかも・・・ね。」
システム:「どうして使わなかったのですか。」
「いやーほら俺って人の話聞かないときがあるっていうか・・・ね。」
システム:「」 ゴゴゴゴゴゴ・・・
「システムさん、怒ってます?何か言ってください。」
システム:「勇者さんは本当にバカだな。」
「おい、クリアしたんだから結果オーライだろ!
それに何だよ “じゃしんのぞう” って!意味わかんねーよ!」
システム:「はぁ・・・ちょっとかっこいいと思ってしまった私もバカでした。
感動を返して。」
「勇者様・・・これは凄いことですぞ。村の伝説で、
“じゃしんのぞう” を使わずに巨人を倒した男は勇者の中の勇者、
と言われております。」
「だろうね・・・。あの強さはヤバいわ。」
そのとき、血相を変えた村人が飛び込んでくる。
「て、てぇへんだ!赤ぇドラゴンが村さ来とる!」
「な、なにィ!?」
システム:「勇者と村長たちは外に出た。」
「・・・わしは
真の力を解放したキクロプスを倒した者がいるな。・・・そいつを出せ。」
システム:「赤黒いドラゴンが心の中に語りかけてきた。」
「お、俺だ!」
「やはり貴様か、魔王をも屠りし勇者よ。」
「え、俺まだ魔王倒してないどころかレベル7だよ。何言ってんだあいつ。」
システム:「ははぁ、そういうことですか。」
「知っているのかシス電!」
システム:「たぶんあのドラゴンも
“じゃしんのぞう” 弱体化なしのキクロプスも “裏ボス” なんですよ。」
「裏ボス!?」
システム:「本来倒せないはずの “裏ボス” を倒しちゃったから、
フラグ管理がおかしくなったんですねぇ。」
「えぇ・・・ガバガバじゃん・・・。」
「わしと戦うのだ、勇者よ。もはや逃しはしない。」
システム:「自動セーブしました。」
「ちょ!」
システム:「あーあ、また詰みセーブ・・・。」
「ええい、なるようになる!いくぞシステム!最後まで付いて来るんだろ!」
システム:「はいっ!」
システム:「勇者の攻撃!」
(おわり)
負けイベントかな?と思ったら詰みセーブでした ゼブラD @zebra_director
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