数え終えたら

水原緋色

第1話

「知ってるか? この神社の階段は登るときと降りるときでは段数が違うんだ」


どこにでもあるようなそんな話を僕は鼻で笑う。

狐の面を被った彼はニヤリと笑みを浮かべると、僕の数段上へ跳ねるように上り僕を見下げる。


「数えてみたことあるのか、お前」

「あるけど、途中でやめたよ。疲れたし、そもそも意味のないことだしね」

「そうか、そうか。お前は知らないんだな」


勿体ぶるように言葉を切る。いつもそうだ。

大事でもないことを大袈裟にいう。それが僕はあまり気にくわない。


「この階段の正確な数は俺だけが知っている。俺にこの階段の正確な数を伝えれば–––」


やってやろうじゃないか。


僕は一歩踏み出した。

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数え終えたら 水原緋色 @hiro_mizuhara

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