第3話 好感度+100

「なぁ、なんでお前素直に付いて来てんの?」

 俺は、後ろを付いて歩いてくる、鶴岡に声をかけた。

「は!?別に、一緒に行動してないとこの世界から脱出する方法が見つからないから、仕方なく付いて歩いてるだけだし。勘違いすんな!」

 いちいち牙をむいて反論してくる。

 確かに、今は一人で行動するよりも二人で行動している方が、効率が良い。

 それに、アニメやゲームに耐性がない鶴岡にとって、異世界は怖い世界なのかもしれないな。


 その後は、遭遇するスライムを倒して歩いていた。


「ねぇ、どこ向かってるの?」

 しばらく歩いて、鶴岡が聞いてくる。

「まずは、この世界のことを知らなくちゃいけないからな、町を探そう。そこで色々聞き込みをしたい」

 異世界に来たからには、人に聞き込みをして攻略していくと相場が決まっている。まずは、町を探そう。

「そんなこと言っても、見渡す限りの草原なんですけど……」

「確かに…」

 そう、これまで1時間ほど歩いてきたが、一向に町はおろか草原の終わりさえ見えないのだ。

「どうしたものか……」

 いったいどうしたら、この草原から抜けられるのだろうか…。何か、条件があるのか……。


「南雲!?前!!!」


 考えながら歩いていたら、鶴岡に後ろから怒鳴られた。

 前を見ると、モンスターが襲い掛かってくるところだった。


 俺は思わず右腕を前に出して、その攻撃をガードする。


「っ!!!」

 激痛が腕に広がり、見ると肘の上あたりを爪で引っかかれて、血が出ている。


「ちょっと!大丈夫!?」

 さすがに心配したのか、鶴岡が駆け寄ってくる。

「ねぇ、あのモンスターさっきまでの奴らと違くない?」

 そう、鶴岡の言うように襲い掛かってきたモンスターは、さっきまでのスライムとは違う形をしている。

 身体は犬のような容貌をしているが、背中のあたりから翼が生えている。


「ちっ!強そうだな」

 おそらく、ゲームの中では、スライムの次に出てくるようなモンスターだろう。

「だが、それくらいのレベルなら、俺だって倒せるぜ!」

 スライムの次くらいのレベルのモンスターなら、レベル1でも倒せるだろう。

 俺はそう思い、モンスターに向かって駆け出す。


 俺が突撃してくるのに気づいたモンスターは、羽を羽ばたかせて俺に突撃してくる。

 俺はそれを正面から剣で受け止め、切り流そうとする。


 しかし_________。

「なっ!?」

 ボロボロの剣は、あっさりぽきっと折れてしまった。

 さっきまでのスライムとの戦闘で、限界がきていたようだ。


 それを好機と見たのか、モンスターは俺の足にかみついてくる。

「うがああああああ!!!!!」

 あまりの激痛に、声を上げてしまう。

 俺はモンスターを離そうと、足をバタバタを振るうが噛みついたまま離そうとしない。

 牙が肉に食い込んできて、激しい痛みが走る。


「ちょっと!離れなさいよ!」

 そんな声と共に、足の痛みが少しだけ和らぐ。

 痛みを我慢するたっめに、つむっていた目を開くと、鶴岡が杖をモンスターに叩きつけて、俺の足から離してくれていた。

「鶴岡……」

「ちょっとそこで、じっとしときなさい!」


 そう言って鶴岡は、モンスターに向かって駆けていく。

 そして突進してきたモンスターに対して、杖を振るう。

 すると、鶴岡の攻撃を顔面で受けたモンスターは、光の粒となり霧散した。

 どうやら倒したようだ。


『タラタター♪♪』


〈南雲灯は0経験値と15コシルを獲得した〉

〈鶴岡美乃梨は172経験値を獲得した。レベルが6に上がった。回復魔法、アドファーを習得した。南雲灯への好感度が100上がった。好感度レベルが3に上がった〉


「お前、なんで俺のこと……」

「うるさいはね、じっとしてなさい」

 そう言って鶴岡は、俺に背中を向けたまま、何やら呪文をつぶやいて、

「……アドファー!」

 魔法名をつぶやくと、鶴岡の杖から緑色の光が放たれて、俺の全身を包んだ。

 するとほどなくして、腕と足に付いた傷口がふさがり、痛みが和らいでいく。

 どうやらさっき習得した魔法を、使ってくれたらしい。


「なぁ、なんで俺のために呪文を……」

「うるさいって言ってるでしょ!あんたに死なれたら困るだけよ」

「でも、お前は俺のこと嫌いなはずじゃ。だったら、死んだ方が…」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!」

 振り返った鶴岡の顔は赤くなり、目には涙があふれていた。


〈好感度が100上がった。好感度レベルが3に上がった〉

 ふと、モンスターを倒すたびに鶴岡の頭上に表示される文字が脳裏をよぎった。


 今まで気づいてなかったが……。

「好感度ってもしかして……」

 俺は、鶴岡の顔を見やる。

 鶴岡は、俺の顔をじっと見つめたままだ。


 こいつは俺に、好意を寄せ始めている……?

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