第108話 バイク

 250ccのバイクに乗っていた。

 免許も無いのに?

 そう気づくとバイクは急に動かなくなった。

 乗れるわけがない…でも乗っていたはず…夜の道路に倒れたバイク。

 白いタンク、旧車らしい武骨なバイク。

 私はバイクをそのままにして歩き出す。


 ガレージの中で中年の男がバイクをいじっていた。

 私は声を掛けた。

「すいません、バイクの乗り方を教えてください」

「乗れないのか?」

「はい、でもバイクはあるんです…250ccだけど早いバイクが…」

「オマエのバイクじゃんないな」

「いえ、私のバイクです、すぐソコにあるんです」

「ソレはオマエのバイクじゃない…オマエには乗れないのだから…」

(乗っていたはずなのに…私のバイクなのに)


 私はガレージを出ようとすると

「オマエのバイクはソレだよ」

 男が指さした先には、小さな子供用の電動玩具が置いてある。

(コレじゃない…私のバイクはコレじゃない…)


 男は私に背を向けたままだが、バカにするように笑っているのが解った。

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