第103話 鰻
TVを観ていた。
有名な男性アイドルが、せんべい職人さんに弟子入りして、せんべいを作る、そんな内容らしい。
観ていたはずなのに、知らぬ間に私は、工場のような作業場に立っていた。
突然、カメラを向けられインタビューされる。
「このウナギをどうされるんですか?」
マイクを向けたのは、先ほどの男性アイドル。
私は流暢にウナギを、せんべいにする工程を喋りだす。
工場の中をウナギが入っている水槽から順に歩きながら工程を説明していく。
(私はせんべいなど作ったことはないのだが…ましてウナギなど触ったことも無い…)
徐々に不安が襲ってくる。
なんで私は説明できているんだ?
いや…出来るはずないのだ、ウソを喋っているはずなのに…。
「えぇ、こうやって生きたまま、ウナギの身を包丁の背中で削いでいくのです」
恐る恐る横目で見ると、私の視線の先で、先ほどの職人がウナギを包丁の背でゴリゴリと身を削ぎだした。
(ウソだ…そんなわけない…)
吐きそうなほど生臭い工場、ニコニコと笑いながら、次は?次は?と求め続ける男性アイドル、無表情で私の指先にカメラを向けるカメラマン、後ろにいる数名のTV関係者、工場で働く職人、作業員、注がれる視線が怖い。
「オマエ…ホントは何も知らないんだろ」
見透かされている…それが怖くて、だけど口だけは流暢にウソを吐き続ける。
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