第100話 引っ越し

 大きな広間に荷物を運んでいた。

 どうやら私は引っ越しをしているようだ。

 木造のお寺のような古い建物、入口は広く、天井が高く、仏像が無いだけのお寺のよう。


 1階には居間しかなく、その広さは30畳ほど4隅に階段があり2階へ上がれるが、各々の部屋は6畳ほどの広さしかない。

 階段はそれぞれ異なる角度、使用になっている。

 いずれも古く、階段というより梯子に近いものもある。

(ココで暮らすのは嫌だな…)

 そう思いながらも、私は車から荷物を運び出す。

 車は現在乗っている車種ではなく、私が20歳半ばに乗っていた車だった。

 降ろす荷物には生活に必要な物は無く、ひたすら食玩を飾ったコレクションケースばかりを降ろしている。

 私は、それをどう並べるかだけを考えており、一向に引っ越しが終わる気配がない。

 最終的には、全てが思い通りに並べられないと気付き、私は荷物を再び車へ戻し始めた。

 運ぶ度に、中のフィギュアのパーツは取れ、コレクションケースからフィギュアが零れ落ちる。

 それに嫌気が差してきた。

 いつの間にか勝手に上がり込んだ見知らぬ子供達が、零れたフィギュアを拾い持ち去って行く。


 全てが嫌になって、私は玄関を車で塞ぎ、子供達を閉じ込めたまま、その家に火を放った。


 私は、とても清々しい気分だった。

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