第91話 パチンコ

 パチンコを打っていた。

 賭け事などしないのに…。

 負けているようで、僕は両替に席を立つ。

 友人だと思うのだが、私は、別の名前で呼んでいた。

 彼が言うには、最近、両替金を詐欺るヤクザがいるから気を付けろとの事だった。

 1万を入れると、両替が3万円分出てくる。

 黙っていると、ヤクザが自分の金を盗ったと因縁をつけ、口止め料を請求してくるとのことだ。

 私が両替すると、確かに3万円分の千円札が排出された。

 なるほどと、カウンターヘ向かい。

 店員を呼ぶのだが、まったく私のことを無視している。


 そうこうしているうちに、白いスーツの男が私の後ろに立ち、因縁をつけてきた。

 コイツか、そう思い、ヤクザを壁に押し付ける。

 逆に脅していると、金をバラ撒きながら歩いてくる若い男が近づいてきた。

 ヤクザに1万円渡し、私にも要るか?と聞いてくる。

「要らねェよ!!」

 怒鳴ると、友人が

「いつもすいません」

 と頭を下げながら1万円を受け取っている。

 気付けばヤクザもペコペコしながら店を出て行く。


「桜雪くん、キミも」

 再び、私に1万円を差し出す若い男。

 よく見れば、小学生の頃の同級生、そういえば、彼は社長の息子だった…。

 子供のころは気にならなかったが、大人になると酷く羨ましく思える。

 惨めな気持ちだった。

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