第29夜 宝石とカニ
どうやら私の仕事は河で宝石とカニを採る事のようだ。
なんの迷いもなく、2人一組でドラム缶に網ですくった泥を入れてトラックに運ぶ。
ドラム缶は2個あり、1個は時折泥と一緒に採れるカニを入れる。
溜まった泥を綺麗な水で少しずつ洗い流していくと、底の方に砂利に混ざった小さな宝石が出てくる、それを別の箱に入れていくのだ。
なんの迷いもなく、それを無言で繰り返す。
カニは大きく、挟まれると痛そうだ。
慎重に網から外してドラム缶に放り込む。
缶の中でワシャワシャと蠢くカニは気持ちのいいものではなく、とても不気味な生き物に思えた。
宝石は、流れが急で深い場所で採れるようで、誰だか名前も顔も知らないパートナーは深い場所へ歩いて行った。
胸まで浸かり、大きな網で底の泥をすくう。
流されなければいいのだが…そう思うが矢先、彼は足を滑らせて流されてしまった。
大声で助けを呼ぶのだが、誰も助けようとしない。
皆、方々でひたすら作業を続けている。
トラックの所まで戻ると黒いスーツのガラの悪い男が立っている。
助けてくださいと頼むが、すぐに別のパートナーが来るから心配するなと笑う。
河の方に目をやると、私のパートナーは遠くへ流されていくのだが、彼は生きることを諦めたかのように、無気力に浮かんでいる。
仕方なくドラム缶のところに戻ると、新しいパートナーがすでにカニを採っていた。
網から外せずにマゴマゴしているので、こうやるのだと教える。
私は、すでに流されたパートナーのことを忘れているのだ。
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