第16夜 ナス

 外国のロックスターがステージを終えた。

 演奏が一通り終わっても帰ろうとしないファン。

 彼らは、ひっそりと客席に紛れ、その様子を見ている。


 私だけが知っている。

 どの目線で見ているのか、ソレが解らない。


 場面が変わる、目線は変わらない。

 TVを観ているような目線なのかもしれない。


 少女がラケットを振っている。

 テニスのラケットのようだ。

 母親に怒られている。

「自分でやりたいと言ったのだろう!!」

 母親の指導は凄まじく、泣きながら少女はラケットを振り続ける。

 何年もそうしてラケットを振り続けていたのだろう、数年後、少女はラケットはラケットを持って、大きな木になったナスを目の前に立っていた。

 ナスは1mほどのツタに無数になっている。

 少女は笑いながらラケットを縦にヒュッと一振りする。

 ナスが賽の目にカットされバラバラと地面に落ちる。

 少女は笑いながら、ヒュッ、ヒュッとナスをバラバラにカットしていく、木になったままのナスを。

「まだまだ、大きさが揃わないのだけど、ママに怒られてしまうわ」

 TVカメラに話しかけるように笑いながら何事か話している。


 私はその様子を観ている。

 地面に落ちた無数のナスは、どうするのだろうか?

 そればかりが気になっている。

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