第169話

「たとえそうだとしても、私の御父様に対する色々な感情があったとしてもあの時、私が逃げた事が始まりなのです……だから、御父様や評議院に怒りの矛先を向けるのは意味がありません……と言っても、あなたは納得できないでしょうね……いいわ、リンスロットの好きにしなさい……ただし、その行動に対する責任はきちんと負いなさい……私の言う意味が、わかりますね……」




「はい……御姉様……」


 確固たる意志を言葉に込めるリンスロット……。




「りおんさん……リンスロットをよろしくお願いします……」


 リンスロットの覚悟を読み取ったエレノアは、りおんを見つめ、言った。




「リンスロット……お別れです……みなさんと一緒に私の覚悟をしっかりと魂に刻み込みなさい……いいですね……」


「……はい……御姉様……」


「あなたの姉で、私は幸せでした……」


 少し震えた声で言い、リンスロットを強く抱きしめ、まだ「子供」のおでこにキスし、その余韻を楽しむ事なく、自身の決心を鈍らせない為、妹を突き放すエレノア……。


 更に自分とリンスロット達との間に、強力な防壁を展開し、ひとりス一パ一ダ一クエネルギ一に立ち向かう。




「御姉様っ……」


 傷ついた躰と心をいとわず、防壁を破ろうとするリンスロット……彼女もわかっている……自分の実力、まして今の状態で姉の強力な防壁を砕く事など不可能であり、エレノアも、そして自分でさえも「望んで」はいない……。


 それでも、防壁に「歯向かう」衝動を止められない、無意識から湧き上がるリンスロットの深層。




「ふふっ……」


 そんなリンスロットの「可愛い」抵抗を、エレノアは背中で感じ、笑い、振り返る……。




「リンスロットもりおんさんと同じで御母様に逢いたいですか……」




「…………」


 不思議な問いかけに、リンスロットは明確な答えが出せない。


 当然だ……。


 遂に抵抗をやめ、自分を見つめるリンスロットを「眺める」エレノア……少女らしい仕草、瞳、強がりの中に潜むリンスロットの本質を垣間見、そばで同じ表情をみせているりおんと相まって、姉として、女として「新たな」歓びを感じるエレノア。


 リンスロットとエレノアの距離は、広がってゆく……とうとう、高軌道の端にまでエレノアは達する……。


 唸り、うねるス一パ一ダ一クエネルギ一と対峙するエレノア……。


 すうっと息を吸い、静かに吐く……。


 宇宙空間が適度に冷え……鎮まる……。

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