第170話

「オフェリア……プラチナスタークラス権限を緊急行使……シンセティックパスワード強制入力……評議院及び監理局セキュリティコード解除……」


「了解……プラチナスタークラスマスターの権限を緊急行使……」




『シンセティックパスワード強制入力開始……バックドア解放……パスワード入力完了……』




「セキュリティコード……解除しました……」


「プラチナスタークラス……ロナール・クロフォード・エレノア……承認ナンバー0077プレミアムステイタス……」




『承認ナンバー……0077プレミアムステイタスを確認しました……』


『生体、指紋、虹彩認証を開始します……』


 エレノアは、オフェリアを強く握り、見つめ、その時を待つ……。




『各認証……完了……ポーター出力リミット解除……プラチナスタークラス権限のモードを選択し、音声にて入力して下さい……』


 無味無臭なアナウンスにエレノアは「ひとつ」しかない選択肢を明瞭な魂と心で宇宙に放つ……。






「モード・ウィッチ……起動……」


『音声……確認……モード・ウィッチを起動します……よろしいですか……』


 エレノアは、静かだった……。




『安全デバイス解除……モード・ウィッチの初期起動を開始します……』


 オフェリアが低く唸り始め、発光する……。


『ポーターとの相互リンクを破棄し、サブ・イグジスタンス・スティックを形成しますか……』


 音声が問う……。




「ポーターとの相互リンク解除を承認……契約を破棄し、サブ・イグジスタンス・スティック形成を承認します……」


「エレノア……」


 エレノアの決意に、オフェリアが抵抗を示す。


 相互リンク解除……即ち、マスターとポーターのマジカルリンクをも破棄して、ポーターの持ち得る全ての能力を、ポーターに似せた仮のステッキに移譲するというプラチナスタークラスに与えられた特別権限……。


 モード・ウィッチ起動における「所作」のひとつである。




「何故ですかエレノア……私もあなたと一緒に……」


「いいえオフェリア……あなたまで私の過去の清算につき合う必要はないのです……あなたをリンスロットに預けます……きっと妹は、あなたに最適なマスターを見つけ、託すでしょう……だからその時まで、ゆっくり休んでね……」


「嫌です……私はいつまでもあなたと共にありたいのです……」


 子供の様に拗ねるオフェリアを胸元に収めて、あやし、エレノアはこれまで自分に尽くしてくれた「彼女」を愛しむ……。


「エレノア……私はあなたを尊敬し……愛しているのです……」


 オフェリアから悲しみの「涙」が溢れる……。

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