第167話

 この語らいの時間、ス一パ一ダ一クエネルギ一はふたりを愛おしく見つめ、攻撃を中断している訳ではない……。


 絶えずダークエネルギーを産み出し、魔法少女らの息の根を止めようと「侵攻」はしている。


 しかし、その全てを愛おしい会話を続けながら、エレノアが「掃討」する……。


 強力な防御シールドを張り巡らし、無数のダークエネルギーらの侵攻を阻止……同時にオフェリアを持つ腕を「僅か」に動かして正確無比なエナジー弾を彼らに放ち、貫き、消失させる……。


 しかもこの時、エレノアは敵に背中を向けている……リンスロットとは触れ合いながらも、攻撃の気配は感じ取っており、容易く反撃する。


 その際、敵に目もくれる事もなく、シールドを展開し、エナジー弾を拡散させ、リンスロット、りおん、魔法少女達にこれ以上の傷を許さず、掃討してゆく……。


 その美しい髪を乱さず、肌の艶やかさを保ち、心はもう動じない……これこそがエレノアの「美学」であり、実力の一端である。


 この「美学」に魔法少女達は心地良い「脱力」すら感じ、エレノアの振る舞いを眺めるしかなかった。


 圧倒的な実力差を思い知るとともに、ひょっとしてス一パ一ダ一クエネルギ一は弱いのか……という「錯覚」をも伴って……。


 しかし、錯覚はすぐに解かれる。


 自分達では、なにもできなかったのだ……それが真実……。


 プラチナスタークラスとの明確な差。


 故に、突きつけられた現実に「脱力」し「眺める」しかない。


 プラチナスタークラスの中でも、エレノアのそれは「特別」なのだから……。




 エレノアの「自動反撃」の能力は現有、過去のプラチナスタークラスの誰も持ち合わせていない「ギフト」なのだ……。




「リンスロット……こんなに傷ついて……」


 しなやかなエレノアの指が、リンスロットの「幼い」頬を撫でる。


「これくらい、わたくしは……御姉様……」


「あなたには迷惑をかけてばかりで……不出来な姉でごめんなさい……」


 触れ合う心……意地と「甘え」が介在する妹と、癒しと謝罪が絡む姉……。


 りおんが踏み入り、理解、共有し得ない領域。




「リンスロット……私はあの時、成すべき事を放棄した……自らの弱さ、迷いに逃げて、りおんさんの御母様に縋り、見捨て、のうのうと今まで生きてきた……自分の心に残る棘を抜かず、その痛みを誤魔化し、偽って……」


「今、その全てを私は、私の、かつて最強魔法少女と呼ばれていたにもかかわらず、何もかも裏切った自分を、敵を討ち亡ぼす時なのです……先程、りおんさんとふたりで対話してようやく……ふふっ、こんな簡単な決心をするのに、数十年も費やしてしまいました……」

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