第166話
「もしも、御母様に逢えるとしたら、逢いたいですか……りおんさん」
もう一度、りおんの意思を確かめるエレノア。
「そ、それは……」
困惑するりおん……物心ついた頃から、母の存在など皆無だったりおん……その概念さえも稀薄な母という「女」を間近に体感する事のなかったりおんに、エレノアのあり得ない問いかけは「酷」。
「うふっ……困ってしまいますよね……ごめんなさい、りおんさん……」
少し悪戯っぽくはにかみ、エレノアの右手はりおんの頬に柔らかく触れる……。
頬から伝わるエレノアの「本性」は冷徹さ、表層的な感情を洗浄する温もりと優しさに満ち、りおんの体内、意識に流れ込む。
「りおんさんの願いは……叶いますよ……」
確信を持ってエレノアは言い切った……。
明確な意思表示など、りおんはしてはいない……しかしエレノアは、りおんの意識に眠る、りおんすら知り得ない願望をいとも簡単に読み取り、言い切った……。
「…………」
「逢いたくない……」などと言えないりおん。
戸惑いもある。
一般概念的に「死んだ」人間と逢う事など「不可能」……それでもエレノアは「逢える」と言った。
「どうやって……」……りおんの思考回路は「迷走」する。
「きっと……逢えます……」
尚も、自信に満ちた瞳でエレノアの指先は、りおんから離れる……。
「リンスロットと話をさせてもらえるかしら……」
「はい……」
りおんは、胸元に収めていたリンスロットをエレノアに預け、少しふたりと距離を置く……。
「御姉様……」
「リンスロット、私は姉としては失格で、未熟な女でした……」
「何を言っているのですか……御姉様は御姉様……わたくしのかけがえのない存在なのです……」
エレノアの胸元で「甘え」声を絞るリンスロット。
「そう……嬉しいわ……それでも私の不出来さ故にリンスロットには余計な重圧を負わせてしまった……その事は、変えようのない事実……」
「御姉様、重圧なんて……わたくしは辛いなんて感じた事はありませんでしたわ……アンテロッティ、ローグ、コステリッツ……大切な友がわたくしを支えてくださいました……そして日本に来て、りおんやひばり、他国の魔法少女との出逢い……ふふっ、ここだけの話、キャサリン達と出逢って、語らい、笑って、喧嘩して、いろんな感情、価値観を体感して、わたくしの世界観は広がりましたわ……」
「鏡花が突然産休に入って、まさか御姉様が……と思いましたが、わたくしは……嬉しかったのです」
「みなさんの前で、御姉様に厳しい態度をとられても、何処かわたくしの心は温まり、嬉しかった」
「リンスロット……」
姉妹の「麗しい」会話……。
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