第120話

 中規模のダークエネルギーがふたりに迫る。


「じゃあリンスっ、ちゃっちゃと壊滅しちゃいましょう……」


「いつもながら呑気で適当ですわね……」


「いつもの事だよリンス……んじゃステッキさん、適当スラッシュ弾発射用意……」


「うむ、りおん……」


 意気込むりおんとステッキさんの間に突如、聞き覚えのある女性ガイドの無感情な声が介入する。




『緊急アクセス開始……』


『魔法評議院特別コード入力……』


「うっ、これは……」


 何者かの侵入を必死に拒みながら、呻くステッキさん……。


「まさか……こんな時に……」


 魔法評議院の介入に、眉をしかめるリンスロットとシルフィ……。


「あれっ、ステッキさんどうしたの……?」


 どうやっても、自らの意思を受け入れなくなった赤く発光するステッキさんに動揺するりおん。




『特別コード入力中……』


『ポーターパーソナルセキュリティ……解読』


『解読確認……魔法評議院特別コード……承認……』


「うっ……」


 敗北するステッキさん……。


『魔法評議院の権限により、ポーター及び契約者とのマジカルリンク解除シークエンス開始……』


「ステッキさん……なんなのこれっ……」


「すまんりおん……抵抗したが、こうなっては私にもどうする事もできない……」


「どうしちゃったの……魔法評議院って何……?」


 ステッキさんを振り回し、意思疎通を試みるりおん……しかし、それは叶わない」


『解除コード入力……』




『解除コードが承認されました……』


「りおんさん……落ち着いて下さい……」


 ステッキさんから「すぅっと」這え出たタブレット画面からエレノアが現れ、りおんに言い聞かせる。


「エレノア先生……これはどういう事なんですか」


「申し訳ありません、りおんさん……事前に私が把握していなかったとはいえ、全ては魔法評議院が下した決定です……」


「でも……」


「従って下さい……」


 権威がかり、冷えた声色のエレノアが食い下がるりおんを諭す……。


『マジカルリンク強制解除プログラム……インストール……』


「こ、こいつは手強い……すまんがりおん、いつまで正気を保っていられるか、わからんぞ……」


 心許ないステッキさんの本音に、りおんの不安は加速する。


『プログラム遂行率……70パーセント……』


「御姉様……こんなやり方はあまりに横暴ではありませんか……」


 たまらず声を荒げ「介入」するリンスロット。


「リンスロットさん……唐突とはいえ、これは魔法監理局の上部組織である魔法評議院の総意と決定です……魔法少女にある程度の権限があるとはいえこの場合、何を選択し受け入れるか……賢明なあなたならおわかりの筈ですね……」


「くっ……」

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