第121話

『プログラム遂行率……100パーセント……』


『マジカルリンクが強制解除されました……ダークエネルギー壊滅中のポーター及びその契約者は、これより10分以内に速やかに帰還して下さい……』


「ステッキさんっ、マジカルリンク強制解除って何なの……」


「魔法少女でなくなる……という事だ、りおん」


 焦り、不安が叫びとなって表現されたりおんの問いに、覆せない「事実」をステッキさんは、怒りと情けなさを滲ませ、告げる。


「申し訳ないですがりおんさん、直ちに帰還して下さい……それと明日、正式にマジカルリンク解除ロックを施しますので、登校したら進路指導室へ来て下さい……」


「御姉様っ、何も今……こんな時に……」


「ヘルプがそちらに向かっています……早く帰還しないと生命に支障をきたしますので、急いで下さい……」


 稚拙な妹の言葉など、お構いなし……冷たく、大人の狡賢さを秘めた声質が、宇宙空間の全てと絡み合い、常識となる……。


「御姉さ……」


「リンスロットさん……あなたがこれ以上、評議院の決定に異議を唱えるのであれば、私の権限で一時的にマジカルリンク強制解除を執行しますが……」


「そ、それは……」


「そこにあなたの家庭環境の優位さ、立場は一切考慮されません……私の言っている意味がわかりますね……」


「…………」


「もうよせ、リンスロット……足掻いてもどうにもならん……今は目の前のダークエネルギー壊滅に集中しろ……」


 珍しくステッキさんが、リンスロットを「気遣う」……。




「わ、わかりましたわ……戻りなさい、りおん……そうしないとあなたが死んでしまいますわ……魔法少女であればこそ、この宇宙空間で生きている事が許されているのですから……」


「リンス……」


「普通の少女に還るりおんに、ここにいる資格はありませんわ……」


 リンスロットの「正論」と「優しさ」……。


 宇宙線、太陽風……人間にとって有害な環境下で生きていられるのは「魔法」が介在しての事。


 その恩恵を、あたかも「日常」の景色なのだと意識に刷り込まれ、慣らされていた事実を、普通の少女に「成り下がる」事で改めて思い知らされるりおん……。


 瞬間、血の気が失せ、魂が震える……。




「りおん、時間がないぞ……」


「わかってるよ……ステッキさん……」


『5分……経過しました……』


 りおんとステッキさんの虚しさを逆なでするアナウンス……。

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