第109話

「まぁ、やろうと思えば……そうですわね……でも決して手を抜いた訳ではありませんわよ……今回はあのふたりにお任せしただけですわ……ふたりの攻撃でもどうにもならなかったら、わたくしとしても考えがありましたけれど……それにしても、妙なダークエネルギーでしたわ……」


「やっぱり、あれか……」


「さぁ、確証はありませんわ……向こうもボロは出さないでしょうし……」


 リンスロットは声質を落とし言い、魅惑に満ちた輝き達を睨む……。




「ハンセン……ふたりのデータ、記録したな」


「おうよ、バッチリだぜキャシー」


 欧州カルテット組が、言い知れぬ懐疑と不安の情を滲ませているのをよそに、ひばりおんの全てを「手中にした」キャサリンとハンセンの表情と声は高揚する……。


 横に佇むドロシーの少し作為的なはにかみが、裏に潜む大人達の画策を意味づけ、彼らと渡り合う「武器」をキャサリンは得た……。


 欧州カルテットには、彼女達にのしかかる呪縛めいた重圧……キャサリン、ドロシーには、アメリカ合衆国という唯一無二の大国であらねばならない「大義」が躰、心にねっとりと取り憑く……。


 強要するのは、少女達の戦いに表層的な「賞賛」を浴びせつつ、その威信と名誉を横取りする者達。






「みなさん、帰還して下さい……後は監理局が処理します……お疲れ様でした……」


 鏡花が、記憶消去魔法の発動を滲ませて、魔法少女、ポーター達を労った……。


「疲れたぁ……」


「やっと終わった……」


「死ぬかと思った……」


 様々な感想を言いながらも、淡々と地球へと降下してゆく魔法少女達。


 キャサリン、ドロシーが、エリザベス、シフォンが……そして欧州カルテットが還ってゆく……。




「わたし達も還ろうか……ひばり」


「えぇ……」


 彼女達が戦った「世界」は、いつもの寂しく、暗く、寒い空間に何事もなかった様に戻ってゆく。






 おびただしい流星群、突然の飛来……。


 宇宙からの煌めきのサプライズ……。


 メディア報道の見出し……。




「流星群、綺麗だったね……」


「流星群……そんなの落下したかな……?」


「流星群……?」


「…………」


 記憶、いや「真実」が消えてゆく過程……。


 新たな真実に上書きされた日常も、夏休みがあっという間に過ぎ去り、すぐ2学期が始まろうとしている。


 あれから、ダークエネルギーの襲来は、ない。


 平穏な日々が退屈に続く……。






 某国……。


 某都市……。




 魔法評議院……グランドロッジ。


 時が止まった様な調度品やアンティーク家具に囲まれた部屋……。


 主の如く君臨する「永久暖炉」から生まれる炎が妖しく揺らめき、重厚な空間をふわりと温める。

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