第101話

「あのぅ……失敗してもいいので、とりあえず試してみませんか……足止めもそろそろ……」


 堪えるエリザベスが、彼女には珍しく尖った口調で言う……。


 しかし、想いは月下美人には届かない。


「私じゃなくて、エリザベスやシフォンのポーターと合体すればいいんだよっ……誰がこんなダメポーターと……」


「ダメポーターとは何だよっ……さっきから言わせておけば……俺だってお前さんと合体なんて願い下げだねっ……」


「何よっ……」


「何だよっ……」


 互いに「顔」を突き合わせ、なじり合う。


「前からそのあまのじゃくな性格が、気に入らなかったのよっ……」


「ふんっ、人の事が言えるのか……このガサツ女がっ……」


「なっ……まぁいいわ……まともな名前で呼ばれないゴミ虫ポーターに何を言われても、痛くも痒くもないんだからっ……」


「けっ……口の悪い馬鹿女のくせに……」


「あらっ……今、馬鹿って言いました……ププッ、馬鹿って言った方が馬鹿なのに」


「違うな……そうやって返した方が馬鹿なんだよっ……」


「負け惜しみを……男のくせに、みっともないねぇ……」


「強情女がっ……」


「何よっ……」


「何だよっ……」




『ああああぁっ……』


 またも全員のやるせない声……。


 ダークエネルギーでさえ、煌めきが霞む月下美人とステッキさんの「討論」……。


「あぁ、もうやってらんねぇ……自閉モードシークエンス開始ぃ……」


「月下美人さん……そんなにすねないで……」


「ひばりには悪いけど、最低限の機能を残して内に籠るから……」


「はぁ……困りました……」


 月下美人の固い決意に、ひばりも手をあぐねる。


「月下美人さん、わがままも程々にして下さい……でないと、私にも考えがありますよ……」


 鏡花が緩やかに「脅す」……。


「な、何を言っている鏡花」


「…………」


「ポ、ポーターが自閉モードに入ったら、手がつけられないんだからな……」


 鏡花に抵抗する月下美人……しかし、何処か勢いが削がれた口ぶり。




「そうですか……それなら私も奥の手を使うしかありませんね……」


「奥の手ぇ……やれるもんなら、やってみなっ」


「鏡花を甘く見ない方がいいぞ……彼女がまだ笑っているうちに素直に従う事を勧めるがな……」


 ステッキさんが、月下美人に進言する。


「ちょっと耳を貸せ……」


 月下美人に「密着」したステッキさんが、ひそひそと耳打ちすると彼女の全身は硬直し、寒色系の色調に変化してゆく……。




「それは……本当か……」


「そうだ……だから無駄な抵抗はよせ……」




「わかったよ鏡花……合体します、すればいいんだろ……」

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