第95話

 ステッキさんが説き、りおんに伝える。


「そのサイドエフェクトって、わたしにはないの……?」


「ない……が、強いて言えば適当なところがりおんのサイドエフェクトだがな……」


「それって、わたしのデフォルト設定だよね」


「んんっ……ま、まぁそう気にするな……なまじ能力があるが故に、悩み苦しむ事もある……」


「そんなもんですかねぇ……」


「そうだ……」


 悩ましいステッキさんの「言い訳」に、りおんは渋々納得し、悶々とした気持ちを抑えた。




「ひばりさんとりおんさんは、ここで警戒して下さい……私達は衛星型を攻撃します」


 ふたりを残し、エリザベスと他の魔法少女達は衛星型に立ち向かう……。


「ひばり、大丈夫……」


「えぇ……きっと今回も当たらないと思う」


 裏腹な心と唇の動き……。


 裏付ける、懐疑なひばりの表情……。




「やっと終わりましたわね……」


 リンスロットの攻撃が核を切り裂き、内部からおびただしい光のシャワーが噴出する。


 そのまばゆく「女心」を擽る煌めきの「粉雪」に見惚れる表組の魔法少女達……。


 衛星型の典型的な終焉模様。


「ふふっ……」


 煌めきの中、リンスロットの誇りはより昇華する。


「ふふっ……」


 誰かが笑った……。


 リンスロットではない誰かが……。


 彼女達でさえ持ち得ない、透明で無垢な笑い声。


「ふふっ……」


 そこに悪戯心が加わる。


「誰ですの……?」


 堪らずリンスロットが眉をひそめ、言う。


「あそこだよ……」


 弓を、声の方向に指し示すアンテロッティ。


 切り裂いた筈の核……下半分は煌めきを放出し尽くし消滅しているが、上半分は回転しながら恨めしい光を放ち、笑う……。




「な、何ですの……あれは……」


 伝承にない事象にやや動揺しながら、リンスロットの瞳はシフォンに向かい、説明を求める。




「私にも……わかりません……」


 あっさりと言うシフォン……。


 そのやり取りの間も核は笑い、回転し、新たな正二十面体を形成してゆく……。




「皆さん……こんな事例は初めてです……監理局でも解析をしていますが、今はうかつな攻撃は控えて下さい……」


 鏡花が、とりあえずの方針を告げる。


「様子見って事ですの……」


 語尾に不満が滲むリンスロット……。


「攻撃を加えて事態が悪化するかもしれません……リンスロットさん、ここは控えて下さい」


 いさめ、なだめ、鎮める鏡花……。




「くっ……」


 リンスロットが、奥歯を噛む。


 核は嘲笑い、自身を復活させてゆく……。


 もどかしく眺めるしかない魔法少女達。


 これがりおんならば、適当な技の名前を叫び、攻撃を加えていただろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る