第96話

 リンスロットの脳裏に、後先考えないりおんの「奔放」さが描写され、そうし得ない自身の「縛り」を恨む……。


 彼女の憂鬱さをよそに、核は遂に復活し、端正な正二十面体と更に美しい宝石の煌めきを見せつける。




「綺麗……」


 誰かが……紡いだ……。


 魔法少女という現実から解離した佇まいの奥に潜む、無垢でかろうじてまだ透明な彼女達の魂を揺さぶった事に満足し、結晶の内部から感嘆の光がより放たれて寒い宇宙空間が暖色に照らされ、魔法少女達の魂を温める……。




「ま、眩しい……」


 瞼を絞り、手で目を保護しながらも、温かみと光の雨を感受する魔法少女達……。


 鏡花や監理局でさえ、心奪われ、機能が一時停止した……。




「ふふふっ……」


 また……声が聞こえる。


「だめっ……リンスロットさん……!」


 騙されるな……ひばりの凍った声が木霊する……。


 しかし、それはリンスロットには届かない。


 少女、大人達を欺いた輝きと「ほっこり」とした熱は瞬時に消え失せ、正二十面体の嘲笑は音量を増す。




「あっ……」


 シフォンとリンスロットが無意識に言った時、正二十面体の宝石の「偽装」を繕ったダークエネルギーはもう、そこに存在しなかった……。




「エリザベスさん……」


 焦るひばり……。


「どうしたの……ひばりさん……」


 攻撃を中断し、切迫したひばりの声に応えるエリザベス。


「こっちに向かって……」


「ひばりっ……危ないっ……」


 嫌な「気」を感じたりおんが、続きの言葉を言おうとしたひばりの腕を掴み、自身の元に引き寄せる。


 ひばりが元いた位置を貫く一瞬の脅威……。


「あ、あれは……表組のダークエネルギーなのよ……」


 りおんの腕に絡んだひばりが低く言う……。


 表組、鏡花、監理局を「魅了」した正二十面体の核は、裏組の衛星型を目指す。


「エリザベスさん危険です……衛星型から離れて下さい……!」


 ひばりの忠告に従い、エリザベスが指示し、距離を取る魔法少女達……。


 あの嘲笑が響き渡る……。


 エリザベスのすぐ横をすり抜け、核は衛星型に吸い込まれてゆく。




「シフォンさん……表組の核は裏組の衛星型と融合した模様です……欧州カルテットを先行させて全員、裏組の衛星型に向かってエリザベスさんと合流して下さい……」


「なにか、策はあるのですか……」


 シフォンが期待薄に鏡花に尋ねる……。


「ありません……」


 さっぱりと鏡花が言う。


 ここで戯言に逃げても、彼女達は見透かす……そして鏡花自身の性質も許す筈もない。


「すみません……リンスロットさんの攻撃で壊滅すると思っていたのですが……私達の考えが甘かった様です……」


 自戒する鏡花。

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