第94話

 とりわけシフォン、欧州カルテットの威力は「別格」であり、更に言えばリンスロットのそれは、彼女ひとりでもどうにかなりそうなと思わせる領域の破壊力を備え、衛星型に照射する……。


 実際、リンスロットの「煌めき」は誰よりも大きく、美しく、官能的なまでに妖しく……残酷。




「他愛ないですわね……」


 金髪ドリルヘアを右手の麗しい指で遊び、なびかせ、リンスロットは勝利の言葉を紡ぐ……。


 黒く蠢く外殻は吹き飛ばされ、やがて似つかわしくない虹色に煌めく正二十面体の核が露出された。


 その核も、魔法少女達の攻撃により、ひび割れて一部は欠けている状態……。




「リンスロットさん……お願いします」


 終演のタクトを譲るシフォン……。


「ではシルフィ、行きますわよ……」


 欠け、内部から「美しい」と表現可能な虹色の「血」を流す宝石をリンスロットは厳しく見つめ、シフォンの配慮に応じた。




「エモーショナル・フロマージュスラッシュ……」


 可憐にシルフィを振り、奏で、三日月状に形成された夕日色に光る「音符」達を解き放つリンスロット……。


 あまりの美しく、誇りに満ちた光に息を呑むシフォンやアンテロッティ、ローグ、コステリッツ……そして魔法少女達……。


 限りなく無に等しい薄さに隠された、無情なる鋭利なエモーショナル・フロマージュスラッシュが、核の真ん中を貫く。


 上下均等に分断された核が、眩しく輝き、断末魔を上げる……。




「リンスロットさん……いけません……」


 ひばりの目が、表組の方向を見定めながら、似合わない声色と表情を漂わす。


 しかし、遅かった……。


 ひばりが感じた懸念は、やがて現実になる。


 悪い予感を「感じる」能力が、ひばりにはある。


 だが万能ではない。


 当たる事もあるし、外れる事もある……精度もどっちつかずなものではある……。


 プラチナスタークラスになれば精度は飛躍的に向上され、広範囲で活用可能な極めて特殊な能力。


 が、今回は確信があった……背筋を冷えた血液が廻る今までにないない感覚……。




「エリザベスさん……ちょっと面倒な事になります……」


「どうしたの、ひばりさん……」


「なにか、悪い予感が……表組の方から……」


 確信はあるが、その正体まではわからないひばりは、そこで言いよどむ。


「ひばり、急に深刻になっちゃってどうしたの」


 堪らずりおんが気遣い、言う。


「りおん、ひばりと月下美人には少しだけ先の事というか予感めいた能力が、曖昧ながらも持っているのだ……まぁ、ネタ的に言うならサイドエフェクトみたいなものだ……」

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