第93話

 直径2キロ程の衛星型が「人間社会」に甚大な影響を及ぼす事は、世代を超えて魔法少女達や監理局に言い伝えられている。




「衛星型の中心に、一斉攻撃を仕掛けます……」


 そうシフォンが指示する声をかき消す様に衛星型は呻き、内部から魔法少女達を狙い、強力なレーザーを照射する……。


 防御シールドを展開し、堪える少女達。


 それを「見た」衛星型が、いやらしく出力を増したレーザーを放つ。




「全く……」


 しつこい、下らない……そんな想いを含ませ言ったコステリッツは、プリミッツを華麗に操り、全ての魔法少女達を護る広範囲防御シールドを「奏でる」……。


 彼女の防御シールドは、レーザーを弾き飛ばし、誇らしげに衛星型を蔑む。


『ふっ……』


 リンスロット、アンテロッティ、ローグが口元を緩め、欧州カルテットの「格」を上乗せする。


 コステリッツの防御シールドの模様は、伝統的であり、先鋭的であり、芸術的……。


 その尊厳を否定された衛星型の内部から人型、キューブタイプが呻き出ようと、姿を見せる。




「厄介な事になる前に、掃討しますよ……」


 シフォンが相棒の先端を、衛星型の中心に向ける。


 放射状に取り囲んだ欧州カルテットや魔法少女達も、シフォンの動作に従う。




「エクステンディット・エナジーフロージョン、最大出力……」


 先端が薄オレンジ色に発光、膨らむシフォンのポーター。


 リンスロットのシルフィ、コステリッツのプリミッツ、他の何人かの魔法少女達のポーターの先端も、同様に発光し膨らみ始める……。


 アンテロッティはその矢が、ローグは銃口が輝きを放つ……。


 残る魔法少女達も、自身の個性と各々のポーターの特性に応じた攻撃態勢に入る。


 衛星型が低く呻く……。


 直径3メートル程に達したエクステンディット・エナジーフロージョン……。


 アンテロッティの矢は輝きと大きさを増し、ローグの銃口にもエナジーが集約される。




「エクステンディット・エナジーフロージョン……発射っ……」


 シフォンの号令により、エクステンディット・エナジーフロージョンから精製された高出力レーザーが、各方位から放たれ、衛星型の中心へ突き進む。


 あまりに強力な攻撃の為に、反動によって魔法少女達の躰は重力、姿勢制御が機能しているとはいえ、後方へと弾かれる……。


 迎え撃つ様に衛星型もレーザーで対抗するが、圧倒的火力の魔法少女達の「意志」に吹き飛ばされ、湧き出た人型、キューブタイプは呆気なく蒸発し、短い生涯を終える……。

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