第47話
「それにしても、ひばり様も通だよねぇ……知る人ぞ知るネタだよ……あれは」
「そうよね……マニアックな作品だったわよね。ふふっ、でもりおんさんの狼狽ぶりは私のツボにはまったわ……」
「いやぁ、ひばり様の指示を見た時は凍りついたよぅ……ひばり様が本当に全中裏の総帥で、白いドレスを纏い、お人形を小脇に抱えて病弱な表情でわたしを蔑んで蘭塾送りにされるかと思うと、冷や汗と別の成分の液体が下半身から滲み出るところだったよ……」
「りおん組見参っ……って啖呵をきる寸前だったよ、危ない危ないっ……」
気持ちが高揚し、まくし立てる様に喋るりおんを、ひばりは羨ましく「眺めた」……。
りおんの様に、屈託なく自身を開放できていれば違う景色、違う友、違う「人生」が用意されていたのかもしれない……。
が、ひばりはわかっている……真の自分を表現し、想いを解き放てるのは他の誰でもない、自分自身しかいないのだと……。
りおんは、きっかけに過ぎない……。
自分の変え、人生のレールを切り替える事ができるのは己……。
「ふっ……」
たかが中学生……もっと言えば数日前まで小学生だった「子供」が何をぶった事を……。
自分を客観視し、まだまくし立てているりおんを見ながら、ひばりは吐息をそっと泳がせた……。
午後の授業を終え、帰路につくりおん……。
学級副委員長のひばりは、リンスロットと共に生徒会へ赴き、他に「友達」のいないりおんは、そそくさと教室を出て最寄り駅にぽつぽつと歩く……。
結局、ひばり様以外に誰もりおんに声をかける者はいなかった……。
あの「やってしまった」自己紹介の歓声との対比。
初日は同じ日本人のひばりに任せ、様子見なのか。それとも終始、機嫌の悪かったリンスロットの言い知れぬ圧力がそうさせていたのか……。
「りおん……どうだった……」
だんまりを決め込んでいたステッキさんが、ようやく鞄から「顔」を覗かせ、言った……。
「どうだったって、今頃になって何言ってんのっ……ずっと鞄の中に隠れて……」
「すまんなりおん……私にも事情があってな」
「なんの事情だかっ……んまぁ、ひばり様が話しかけてくれたから良かったものの、明日からの事を考えると……気が重い」
色調を変化させている空にりおんは言い、そしてため息を漂わす……。
「そう暗くなるな、ネタを言い合えるひばりを得たではないか……それだけでも収穫だ……」
「それは嬉しかったけど、怖いよあのリンスロットって子……明らかにわたしを嫌ってるよね……」
「どうかな……彼女もひばり同様、しがらみがあるのだ……色々とな」
「また低いクールな声で意味深に言って……リンスロットの事、知ってるの……?」
「んんんっ……ま、まぁそのあたりは追々な」
「また適当にはぐらかして……これからは大切な事は早めに言ってね……」
「わかった……」
「はぁ、帰って部屋の整理かあ〜」
「頑張れりおん……りおんの進む道は荊の道だ……だが、楽になりたいからと自分の想いを裏切る事はしてはならない……絶対にな……」
「う〜ん、良くわかんないけど……たまに核心を突く事言うよねステッキさんって……」
「まぁな……それよりもりおん、クラスを見てどう感じた……」
「えっ……う〜ん、人数が少ない……クラスに男子がいない……」
「妙な胸騒ぎがする……」
空というパレットで、相反する色の絵具が混ざり合い、世界は夕暮れの表情を覗かせ始める……。
「わかってきたな、りおん……」
「そう、あのクラスの全員……」
「魔法少女だ……」
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