第48話

「はぁ……んもぅ遅刻寸前、ギリギリセーフだよぅ」


 階段の手すりに寄りかかりながら、ようやく4階に辿り着き、ちょっとだけ膝を突いて休憩を入れるりおん……。


「遅くまで夜更かしするりおんが悪いのだ……」


 相変わらず、ステッキさんは鞄の中に隠れ、言う。


「そんな事言ったって、荷物を整理して本やブルーレイソフトやらを棚に収めてから、真っ先にアンテナ配線済ませていたレコーダーに、春アニメの初回放送や2話目がたんまり貯まっているから、アンプやスピーカーをセッティングして早く観たかったし」


「そんなこんなで寝るのが遅くなっちゃったんだよ……ってか、休止モードとか言って黙ってないで少しは手伝ってくれても良かったのでは……」


「いや逆にあれこれ干渉して、りおんの逆鱗に触れるのもどうかと思ってあえて何もしなかったのだよりおん……」


「ちょっと言ってる意味わかんないけど……はぁ、何とかセッティングは終わったけど、服とか本棚に収まりきらなかった本とか……今夜も徹夜必死だよぅ……」


 諦めにも似た感情を捻り出すりおん……。


「私ができる事は、ないからな……見守っているぞ」


「調子のいい事っ……どうせ休止モードなんて嘘なんでしょ……」


「ふふっ、そいつはどうかな……」


 そんな「小粋」な会話を誰にもわからない様に交わす内に、ふたりは教室に到着する……。




「はぁ?……何を言ってるのかしら……」


 教室内から高飛車な声が聞こえる……ただならぬ雰囲気を、触れた引き戸から感じたりおんは、後方の入口から「そろり」と侵入して席に着く……。


「りおんさん、おはよう……」


 ひばりが、複雑な笑顔でりおんを迎える。


「ひばり様、どうしたの……?」


 教壇の方向に首を向け、訊ねた……。


 教壇上で対峙し、窓側にリンスロット……廊下側に、肩にかかるブロンドカラーの髪に、骨太な骨格を持つ少女が腕を組み、リンスロットを睨む。


 ふたりの周りをクラスメイトが囲む……。




「キャサリンさんよ……」


 ひばりが言った……。


 キャサリン・ティーボーン……。


 アメリカ合衆国……テキサス州ダラス出身……。


 いかにもアメリカ「らしい」外観と性格……。


 対するもう一方……。


 ロナール・クロフォード・リンスロット……。


 イギリス……ロンドン出身……。


 りおんの「御馳走」金髪ドリルヘアにツンデレ鉱脈を体内に有し、その埋蔵量はとてつもないものを伺わせる態度と言葉遣い……。


 数多くの魔法少女を代々輩出してきた、名門の家系……。

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