第23話

 パチンコ玉程の大きさだった球体が、ゴルフ、野球、バレー、バスケットボールサイズに「成長」するまで、さほど時間は費やさなかった。


「ここまでとはな……」


 ひとり呟くステッキさん……。


 対ダークエネルギー攻撃波動型スラッシュ弾は、バスケットボールの2倍にまで膨らんだ……。


「う、うぅ……重い……」


 無重力空間の筈なのに、りおんの「元気玉」は既成概念を覆す……想定外の重量に、全身で耐えるりおん……。


「堪えろ……りおん」


 りおんを励ます……。


「うーむ、りおんの適当さを差し引いても、魔法少女になりたてで基礎訓練もなしにここまでとは……やるな、りおん……」


 ひとり、満足げにステッキさんは胸の内で呟く。




「勝ったな……」


 キメ台詞を飛ばした……。


 しかし……


「ふぁぁぁ……」


「へくち……」


 緊張感故か、重さに耐えきれなくなったのか、可愛くクシャミをしてしまったりおん……。


 反動でスラッシュ弾がステッキさんから離れてしまい「下」の世界ヘ落ちてゆく……。


「ああああああぁっ……!」


 目玉が飛び出すという、昭和的なリアクションでステッキさんが叫び、慌てる。


「えへっ……ごめんね……」


 緊迫感のないりおんの謝罪……。


「いやいやいやいやっ……りおんさんっ、これは洒落にならないよっ……」


「えっ、なんで……どうせ大気圏で燃え尽きちゃうんでしょ……」


 適当魔法少女の本領が発揮された。


「燃え尽きないよっ!……あのタイプのスラッシュ弾は、大気圏に干渉すると広範囲に爆発して、地上に多大な被害をもたらすかもしれないんだよ!」


「言っとくけど、りおんが創ったスラッシュ弾は核弾頭にして3個分はあるからね……」




「なんて事してくれたのっ……!」


 何故かダークエネルギーの方に向き、責任転嫁するりおん……。


『ええええっ……?』


 一瞬たじろぐダークエネルギー……。


「いや、なんて事してくれたのはりおんだから……ああぁ、どうしよう……今からスラッシュ弾無効化魔法を構築して軌道計算に、スラッシュ弾との相対速度を考慮に入れて……ああああああぁ、とても間に合わないよぅ……」


 絶望的に慌てふためくステッキさんに……


「だったらさ……」


「んっ……」


「もう1個創って、あれに当てればいいじゃん」


「は…………?」


 適当で無謀なりおんの提案……。


「きっとやれるよ……それと、邪魔なアレも片付けちゃおうよ……」


「片付けるって……何をだ……?」


「何をって……デブリをだよ……」


「聞いた話だと、たくさんの宇宙ゴミが散乱してるんだって?……だったらついでに片付けようよ。ここに来る途中も、いっぱい浮いてたし……みんな邪魔だと思ってるんでしょ……」

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