第22話

「ま、まぁそんなところだ……」


 正確ではないりおんの推測に、ステッキさんは歩調を合わせた……りおんには内緒だが、ほとんどの魔法少女はサイレントモードを選択し、誇らしげに魔法陣を見せて戦う者は数少ない。




「それでステッキさん、敵は……」


「よく見るんだりおん……あれが敵だ……」


「何処っ……どれっ……」


 左右を見回すりおん……。


「あそこだ……」


 ステッキさんが、自身を持つりおんの左手を誘導して敵の方向へと示す。


 示した先を辿るりおん……。




「いたっ……!」


 闇色に蠢き、帯状の物質が波打ち、迫る……。


「な、なんかグロイね……」


 不気味にうねり、呻いているかの様な声で迫り、宇宙の色よりも更に黒い敵の姿を認識して、りおんが普段使わない表現がこぼれた……。


「うむ、今回はウェーブタイプか……」


「あれは何なの、ステッキさん……」


「りおん……あれは念だよ……この宇宙全体のありとあらゆる概念、現象、想いが複雑に組み合わされて融合し物質化した忌むべき敵だ……」


「あれを倒すのが、魔法少女の役目なのね……」


「そうだ……あれは大気圏など関係なく通り抜け、地球上の動植物の意識に悪影響を与える……」


 ステッキさんはそこで口をつぐんだ……どの様な悪影響がもたらされるのか……りおんに考えさせ、魔法少女としての覚悟を改めて認識して欲しいとの意図を込め、言葉を止めた。


「幸い、あれはまだ小規模なものだ……初陣のりおんでも倒せる筈だ……」


「で、敵の正式名称ってなんて言うの……」


「うむ、あれはダークエネルギーだ、りおん……」


「ダーク……!」


 りおんの瞳が輝く……。


「りおん……そのネタはまだ早い……」


 危険を察知したステッキさんが、牽制を入れる。


「う、先手を打たれたか……」


 牽制されたりおんの頬が膨らむ。


「妙に長ったらしいカタカナ名称だと思ったか……しかし、現実はそんなものだ。敵の名前然り、人生然り……」


「切ないなぁ……」


「いや、今はそんな人生論はいいから……」


 仕切り直すステッキさん……。


「では行くぞ……対ダークエネルギー攻撃シークエンス開始……攻撃魔法起動……」


 ヒューンとタービンが回転する様な音を奏で、攻撃体型にステッキさんが移行する。


「えっ……わたしは何をすればいいの……」


「落ち着け、私をダークエネルギーに向け、先端にエネルギーの球体を形成する事をイメージしろ」


「あぁ、元気玉だねっ……みんなの力をオラに分けてくれ……みたいな」


「ま、また各方面から……まぁ、そんなところだ」


「わかった……」


 りおんは瞼を閉じ、ステッキさんの先端に意識を集中させる……。

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