第16話
「はっ……」
りおんが反応した……。
温もりの質が変わった……複雑に張り巡らされた血管を駆け巡る血液の流れをも全て把握できる様な感覚と湧き上がる感情の
視覚化で示すかの様に、りおんの躰が発光する。
『覚醒率……80、90……100……』
『魔法遺伝子の完全覚醒を確認……』
『最終承認シークエンスへ移行します……』
『魔法遺伝子保有者は、ポーターと契約を締結し、魔法監理局の下において、魔法少女としての任務を正しく遂行する事を誓いますか……』
画面に表示される、見慣れたふたつの選択肢。
『いいえ……を選択した場合、直ちに魔法遺伝子強制剥離剤を投与します……これにより魔法遺伝子の覚醒は以降、不可能になります……』
『剥離剤投与後、ポーターとの接触時から現時点までの魔法遺伝子保有者の記憶を消去します……』
ちょっと震えるりおんの指先……。
何を迷い、恐れているのか……じっと画面を見つめるりおん……。
「いいえ」……を選択すれば、りおんが本来望んでいた普通の女の子の普通な日常と人生が時を刻んでゆく……。
これまでのステッキさんとのネタの応酬……魔法少女としての自分……その「普通」ではない人生。
その記憶が消され、風呂から上がり、本棚に収められた小説、ライトノベルを読み、アニメ放送やブルーレイを観て眠りにつくりおん……朝を迎え「いつもの」日々が始まってゆく「普通」の営みが紡がれてゆく……。
「深刻になるくらいなら、適当に決めた方がいい結果に繋がる……」
何処かで聞いた言葉……りおんの意識の中に閉じ込められていた「誰か」の言葉……。
思い出せない……。
そもそも、本当に記憶に残っていた言葉なのか……迷いを封じる為に、魔法少女たりたい深層のりおんが創り、聞かせた言葉ではないのか……。
「えええぇいっ……もういいっ!」
迷い、弱さ、恐れを払いのけ、人として、少女として、女として、りおんはあるべき自分の未来を照らす選択肢をタップした……。
『魔法遺伝子保有者による宣誓が完了しました』
『全てをもとに戻す……の枠を5秒以内にタップすると、初期設定画面に戻ると同時に、契約解除とみなし魔法遺伝子強制剥離剤を投与します……』
タブレットに数字が現れ、カウントが始まる。
『5……4……3……2……1……』
りおんは動かない……。
『ゼロ……』
『最終確認……完了……』
『魔法監理局ホストサーバーに、魔法遺伝子保有者の情報を登録します……』
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