3*出撃ですか……。

第14話

「そうか、りおんもJCか……落ち着けりおん……あの映像が全てではない。絶えず未来は変化する……」


「そりゃそうだよっ……あんな虚しい家庭なら、結婚なんてしない……っていうか恋もしないよっ。いいよ……わたしはひとりで生きてゆくんだ……あはっ、あはははっ……ひとり、ひとりで……」


 堕ちるりおん……。


「り、りおん……」


 あまりのダークっぷりに、悪ふざけが過ぎたと自戒したステッキさんは気遣った声でりおんに寄り添った……。


「ぐわっし……」


 項垂れながら、ステッキさんを力の限りわし掴むりおん……。




「あるよね……」


「んっ……?」


 ステッキさんの戸惑いと苦痛の声……。


「いやぁ、あるでしょ……在庫が……」


 顔を上げたりおんは闇声、闇眼差しでステッキさんに問いかける……。


「ある筈だよ……うん。倉庫の何処かに忘れ去られている魔法少女の在庫がさぁ……」


「い、いやぁ……どうかなぁ」


「あるよ。きっとあるよ……ってか寧ろ、もうそれでいいから探してよ……探せるよねっ……」




「ど、努力します……」


 鬼気迫るりおんにステッキさんは負けた……。


 善処の言葉を聞き、闇世界から帰還したりおんは、ステッキさんを解放する……。


「んっ……?」


「どうかした……ステッキさん」


「あっ、キャッチ入った……」


 古い電信用語を用い、ステッキさんはりおんから距離をとる……。




「もしもしぃ、ぁうんオレだけど……」


「うんうん……うえぇ、うん……うえぇ、うえぇ……うん……」


「ステッキさん後ろ……ってツッコミ入れた方がいいかなぁ……」


 迷うりおん……。


「そうか……わかった」


 ステッキさんは会話を終えると、神妙な面持ちでりおんを見据えた……。




「出撃……」


「ちょっと、魔法遺伝子はまだ凍結中でしょ……」


「すまないりおん……ネタどころではなくなった。敵がすぐそこまで来ていると連絡が入った……」


 その声は低く真実味を帯びて、これまでにはない緊張感が上乗せされている……。


「あいにく他の魔法少女達は、各個人の事情で出撃できない……」


「それって……」


「そうだりおん……君の魔法少女としての初陣だ」


「しゅ、出撃ですか……?」


「全くイレギュラーな事態で、いくつか手順を省く事になるが、これからりおんの魔法遺伝子を覚醒させる……」


 ちょっと前まで、ごく普通の少女が日常生活を送っていた部屋が緊迫度を増し、息苦しさを伴う空間に変化してゆく……。




「私を手に取れ……りおん……」


 両手でステッキさんを握るりおん……。

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