第6話

 白々しくりおんの様子を伺うステッキさん。


『さっきのキスは、ハッタリか……このステッキ、本当に契約するまでここに居座るつもりだ……』


 心で呟いたりおんは、ステッキさんの「戦略」を読み取った……。


 もう、どうにでもなれ……契約してゆるーくだるーく能力のない魔法少女をしばらくやっていれば、ステッキさんも呆れ、契約解除して離れてゆくだろう。そしてこの際だから、色々と契約条件をふっかけてやろうと「適当」な感情がりおんを後押し、自らの意思をステッキさんに告げた……。




「わかりましたっ……」


 適当が疾走する……。


「あぁ、はいはいっ、わかりました……契約しますよっ……します……よろしくお願い、い、た、し、ま、すぅ……」


 両手を広げ、わざとらしくかつ、恩着せがましくりおんは契約を宣言した……。


 ニヤリ……ステッキさんの「口元」が緩む……。


「ただし……」


 さて……本契約をと準備をしようとしていたステッキさんは、りおんの言葉に不意を突かれる。


「3ヶ月経っても、楽しくなかったら……辞めるから……」


「ほえぇ?」


「お試し期間だよ……」


「あ、あのうりおんさん……要は試用期間って事ですよね……」


 ステッキさんの問いに、りおんは2回深く頷いた。


「いやぁ、あのう、あのですね、それって雇われる側じゃなくて、雇う側が決める要項とわたくし理解しているのですが、りおん様は如何お考えでしょうか……」


 しずしずとステッキさんはりおんの顔に近づき、かしこまって労働社会の常識を説く……。




「え、何言ってるのかわからない……」


 少し怖い剣幕で、ステッキさんを脅すりおん。


「いや、そんな怖い顔されましても……」




「ブラックなんだ……」


「え……?」


「ブラック企業なんでしょ……言葉巧みに魔法少女になれるよ……なんて甘い誘いにうっかり契約したら最後、早朝出勤、深夜残業、セクハラ、パワハラのオンパレードなんでしょっ……」


「い、いやぁそれは……」


「辞めるなんて口にしようものなら、脅し、暴力で精神的に追い詰め、反抗する気力を失わせてボロ雑巾の様にコキ使う……」


「りおん、何を被害妄想している……」


「そうか……そうなんだ……」


 汚い物を避ける様にステッキさんを放り投げ、何かに勘づいたりおんは驚き、口元を両手で塞ぐ……。


「売り飛ばされるんだ……そんな、辞めるって騒ぐ女の子は何処かに幽閉されて、如何わしい人達にあんな事やこんな事されて、その手のマニアの人種にカネで売買されて一生、凌辱的な人生を送るんでしょっ……そうでしょ、そうなんでしょっ!」


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