第5話

「魔法少女なんて……向いてないよ……」


「でも今はなってもいいかなぁって感情が、わたしの心で湧き上がる……」


「それが定めなのだよ……りおん」


「もう、またカッコつけた言い方で……定めとか、魔法遺伝子とか、そんな事突きつけられたら選択肢なんて限られちゃうじゃない……」


 いじらしい仕草で呟くりおん……少女としての可愛らしさが際立つ……。




 決断の時が迫る……。


「りおん、後悔のない様に決めてくれ……突然の事ですまないとは思っている……」


「…………」


「誰もりおんに強要はしない……自分で考え、自分で決めてくれ……自分が今、何をすべきなのかを」


「うーん……どうしてシリアスな場面でネタを挟むかなぁ……」




「ぐすんっ……」


「えっ、どうしたのステッキさん……」


「だってさ、魔法遺伝子を持つ少女なんて、そうはいないよ……やっとの思いでりおんを見つけてさぁ……それなのに、にべもなく断られたらボク、会社に戻れないよぅ……」


「か、会社って何?」


「ただでさえ、営業成績がふるわなくて部長から、テメェさっさと契約とってこいよ!このうだつの上がらないダメステッキ野郎がっ!……また引き籠りのニート生活に逆戻りするかって、朝礼で毎日なじられてるんですっ……」


「えぇ……?」


 再びジト目のりおん……。


「同じ部の同僚からも、オメェの成績が悪いから、オレ達まで連帯責任取らされて、反省文を書かされるしよぉっ!……ったく、早く辞めてくんねぇかなぁ圧力が半端なく、女性社員からは『ほらよお茶……雑巾一番搾り味』を冷ややかな視線の中、ありがたく飲まされる部署なんですぅ……」


 涙ながらに、悲哀を訴えるステッキさん……。


「いや、そんなステッキさんの事情、わたし知らないから……」


 突拍子もない吐露に、ジト目が加速するりおん。


「チャーーンス……」


 怪しくうめき、ステッキさんが仕掛ける……。


「お願いしますぅ……どうかこのダメダメステッキ野郎と契約して下さいぃ……グズでノロマなカメですが、やるっきゃないんですぅぅぅ……」


「うーん、どうしようかなぁ……」


「全力で、全力でりおんを支えますからぁ……契約して下さいぃぃ……」


「お願いしますぅぅぅ……」


 りおんの足に「絡み」身をよじらせながら、涙声で懇願するステッキさん。りおんも、無下に断れない雰囲気とステッキさんの「背景」を感じ、どうしたものか?……と、考えあぐねる……。




「チラッ……」


「チラチラッ……」

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