文化祭・序~004

 親睦会も終わり、奴等を見送った後、俺とヒロはジムに行って汗を流した。

 で、地域交流会のスパーを会長に話したのだが……

「お前等だけで?リングは作れるのか?組み立てるのも意外と時間食うぞ」

「本格的なのは無理だけど、似たようなものなら……」

「その似たようなもんで怪我とかされちゃ溜まんねえんだが」

 その心配は考えなかったな……文化祭前の公開スパーは地べただったし。

「セコンドは?レフェリーは?タイムキーパーは?」

「そ、そこもどうにか?」

「まあ、学校祭みたいなもんだろうから、そこまで拘っちゃいねえんだろうが、適当な仕上がりで、これがボクシングですと紹介されちゃ溜まったもんじゃねえんだが」

 いや、そこもその通り。どうしよう?とヒロを見る。

「何ならオッちゃんが面倒見てくれよ。学校の奴に指導してくれ」

「一朝一夕でどうにかなるもんじゃねえよ。そこは博仁、お前もそう思うだろ」

「それを言われちゃな……」

 どうしよう?とヒロが俺を見る。いや、俺が最初に助けを求めたんだが。

「会長、なんならウチが全面的にバックアップしたらどうすか?盛り上がったら練習生来てくれるかもしんねえっすし」

 荒木さんが助け船宜しく発言してくれた。

「そりゃ構わねえ……というか、練習生大量獲得のチャンスがあるんだったら願ってもねえが……おい博仁、白浜だけじゃねえんだろ?その何とかっての」

「お、おう。黒潮、大洋、渓谷、丘陵、中洲、連山……」

「山郷もっすね」

 ふうむと考えこむ会長。意外とビックイベントなのにチャンスを見出したかのように。

「おい博仁、隆、そりゃいつやるんだ?」

「えっと、10月最後の日曜だったか……隆?」

「ああ、うん。文化祭とぶつかるからその日だな」

「まだひと月以上あるか。よし、ウチが全面的にバックアップしようじゃねえか。リングの組み立ても任せろ」

 どん、と胸を叩いて頼もしさをアピった。

 しかし、これは単純にありがたい。礼を言おうとしたところ……

「代わりにウチのジムの名前出させてもらう。協力、大沢ジムってな」

「え?そりゃ……え?だけど聞いてからじゃねえとな……俺が勝手に決めていいもんじゃねえだろうし……」

「そりゃそうだ。実行委員?とやらに聞いてみろ。駄目だったら協力も無しになるけど」

「「えー!?」」

 ぶー垂れる俺達。大人げないとか、強欲とか散々言った。

「甘えんなよお前等。何でもかんでも無償って訳に行くか。ウチの名前を売れるって事で協力申し入れしたって事だ。ねえ会長?」

「荒木の言うとおりだ。お前等の何とかを手伝う代わりに恩恵を寄越せってのは当たり前の事だろ。金を取ろうってんじゃねえんだ。宣伝させろってだけなんだからな」

「そ、そうだけどよ……」

「それに話じゃ、お前等の試合、メインイベントらしいじゃねえか。だったら最高に盛り上がる時だろ。その時にしょぼい演出でもいいと言うのか?簡易リングで素人レフェリーの適当な判定で優劣を付けられてもいいと?」

 メインイベントと言われればそうなるのか?出し物の最終演目みたいだから。屋台はまた違うけど。

「それに、俺達がいた方が安全だろ。お前ら確実にやり過ぎるし、素人セコンドがどのタイミングでタオル投げるとか解んねえだろ」

 それも全くその通りだ。セコンドが会長たちの方が安心に殴り合い出来る。

「解ったっす。聞いてみるっす」

「おう、そうしろ。返事が決まったら教えてくれ」

 ここで話は終わった。明日遥香に聞いてみよう。多分大丈夫だと思うけど、聞いてからじゃないと答えは出せないしな。

で、翌日、遥香に会長に言われたことを伝えたところ――

「え?マジ?有難い話だよそれ!じゃあ今日にでも挨拶に行かなくちゃ!」

 なんかテンションが上がっているけど……

「いいのか?生徒主体って話だったけど……」

「協賛を得られるんだったら全然ありだし、寧ろ持って来いだよ。何やるにしてもお金が必要だって言ったよね?無償で手助けしてくれるんだったら本気で助かるし、プロがやってくれるんだったらケガや事故の心配も少ないし」

 成程、そうか。スポンサーもそうだしな。この場合、練習生がたくさん来るかもって事での協力な訳だから、ウィンウィンと言えばそうかも。

「あ、それと、今度の土曜日学校に残って。地域交流参加校との会議と言うか顔見せがあるから」

「え?お前と横井さんが主催で責任者だろ?国枝君は出し物の責任者って事だから、三人いればいいんじゃ?」

「ダーリンの嫌いな人たちの出入りがあった場合、どうする?」

「んなもん、ぶち砕くに決まってんだろ」

「そうさせないように、各校から隆君に厳重にお願いするためでーす。よって隆君は強制参加なんでーす」

 大きな胸を張って、指でタクトを振るように。わざわざ各校が俺にぶん殴らんでくれって頼むのかよ。

「何なら出番までどこかに引き籠ってもいいんだけど……」

 そうすりゃ被害は出ないだろう、多分。

「ヤマ農の鍋食べたくないの?北商の和楽器演奏観たくないの?」

「そう言われるとな……」

「解ってくれて、良かったよ」

 ニコーっと笑って。解った訳じゃないが、折角だから楽しみたいしな……

 んで、土曜日。内陸の学校の関係もあって、会議開始時間は3時となる。

 その間俺は飯食って自習して。まあ、いつも通りに過ごしていた訳だ。

 で、3時に学校の会議室にやってきた訳だが……

「うわ……」

 軽く引いた。そのくらいの大人数だった。しかし見た顔ばっか。いや、そうじゃない。知らん顔もあるな……

「緒方君、こっちへ」

 横井さんに言われて真正面の席。ホワイトボードを背中にしての、議長席に座らせられる。勿論遥香も国枝君もだ。

「全員揃いましたので、まずは学校名と自己紹介をお願いします」

 横井さんが議長ポジか。遥香は書記ポジのようで、ホワイトボードにマジックを持ってスタンバイしていた。

 真ん前の左側から名乗る。ここは黒潮か。

「黒潮高校代表、河内 孝平。こっちは副代表の宇佐美 圭です。宜しく」

 河内と宇佐美が立って辞儀をする。顔を上げた河内が横井さんに向かってどや顔を拵えた。俺よくやっただろって感じで。

「山郷農業農業科、松田 吉彦。こっちはサブリーダーの食品化学科、桜井 清見。ともに2年です。よろしくお願いします」

 松田はちゃんと学年も言ったぞ。お辞儀の角度も河内よりも深いし。

 そんな感じでスラスラ名乗る各校代表。遥香がホワイトボードにちゃんと記してあって、誰が誰かちゃんと解る。

 そしてこいつ。こいつは初顔だ。どこの学校でなんて奴だ?

「砂丘高校、赤城 鉄平。こっちは副代表の猿間 雄二。よろしく」

 角刈りのごつい奴が代表か……砂丘の赤城って、以前松田から聞いた事があるよな……

「海嶺高校音楽科2年、佐倉 寧々です。サブの向井 咲子ともどもよろしくです」

 海嶺かいれい?また遠い学校だな。潮汐よりも更に奥だよな、あそこ。わざわざ電車で来たのか。この白浜に……

「深海高校2年、片山 陽太。サブで2年の小泉 智弘。よろしく」

 深海も来たのか。ホント大隊だぞ……

 ホワイトボードを見て絶句した。白浜の他、西高、北商、東工、南女。海岸線は黒潮、山農、南海、内湾女子。内陸部が渓谷、中洲、丘陵、連山。

 新に加わった学校が海浜、砂丘、海嶺、深海……

「山塊高校2年、沖田 大地。同じく2年。安原 友則」

 まだあんの!?しかも山塊!?あそこもうすぐ県境だろ!!

「はい、以上18校、全て自己紹介を終えました。このような企画に賛同していただき、誠にありがたく……」

 横井さんの謝辞が頭に入らない。なんだ18校参加って!?

「今回は2年主体ですが、成功の暁には来年もある事なので、皆さんに再び協力をお願いする事があるかもしれません、その時はよろしくお願いしまし」

 横井さんが頭を下げた、当たり前に遥香と国枝君も。俺も慌てて倣った。

 ここで挙手して席を立ったのは、来年度開催予定の渓谷学院の藤咲さん。

「私どもの学校で来年開催予定ですので、初回はどうしても失敗はできません。皆さんのお力添えをお願いします」

 副代表の東山ともども頭を下げる。

「そりゃ失敗は考えてねえけどよ、来年開催は確定なのか?」

 生意気にも河内が質問する。横井さんが怖い顔で河内を睨み、「もうちょっと言葉遣いを考えたらどうかしら」とか小声で言った。

「その方向で動いています。地元観光協会からも協賛を得られたのがその理由です」

 渓谷は観光地、同じ県とは言え、観光で来て欲しいから協力したって事か。

「それに伴い、名産のニジマス、湯葉、蕎麦を原価で仕入れできるようになった他、協賛金も得られましたので」

 おお~と感嘆の声。マジでちゃんとやっているんだな……ホント感心だ。

「渓谷学院は地元名産品の屋台と言う事で宜しいですか?」

「はい」

「ではちょうどいい流れですので、各校の出し物の発表をお願いします」

 またまた黒潮からの発表だ。燻製を焼いて売る、とか、当たり前の事を当たり前のように言ったけど。

 事前に聞いた内容は変わらず。新に加わる学校の出し物は……

「海浜は社交ダンスです。ダンス部の協力が可能となりましたので」

 よしこちゃんがリーダーだったので、当たり前によしこちゃんが出し物の発表を行った。植木君がサブか。何となくそんなイメージだな、植木君。

「海嶺高校はオーケストラになります。学校からの協力がありまして。と言うか、ウチら音楽科はあまり人気が無いから、逆にこの企画に学校が便乗した形になっちゃったと言うか」

 てへへ、と愛想笑いする佐倉さん。なんか可愛い。

「山塊は演劇です。こちら演劇部の要望で参加させていただきました。勿論、俺も演劇部です。発表する機会が乏しいので、学校とは関係ありませんが、参加動機は海嶺さんとおなじようなもんですか」

 ほほ~。演劇か。ちゃんと見た事が無いから見たい気もする。

「深海はスポーツチャンバラの演舞。マイナーなスポーツなので、この機にもっと広めたいようです」

 なんだようですって。お前が出した企画じゃねーのかよ?代表で名前だけ貸したのか?橋本さんのように。

「……砂丘は山農の手助けを申し入れた。だから逆に仕事をくれ」

 赤城って奴が俺を見ながらそう言った。つうか出し物なし?それでいいのか?

「じゃあ西高と同じく会場整理とか、交通誘導とか頼んでいいか?人員が足りなさそうだからよ」

 木村が乗っかった。白浜で出すんじゃねーのそう言う人員は?主催側だし。

「それでいい。30人程度でいいか西高の?」

「ちっと多いような気がするな。その辺後で調整しようぜ。いいだろ主催者さん?」

 振られて横井さんが頷き、追記する。

「人員に関しては白浜も出す予定なのだけれど」

「お前ら文化祭もあんだろ。だったら外部から協力が得られるんだ。そっちにしといた方がいいだろ。そうだよな砂丘の赤城」

 同意の頷きをする赤城。やっぱり俺を見ながら。

 つーか、さっきから全く発言してねーぞ俺。やっぱりいなくても良かったんじゃねーの?

 今日は初日で顔見せ的なアレだ。なので各校の出し物をまとめて時間を決めて、それを調整する程度の話と、屋台の店舗の大きさ等と決める程度。突っ込んだ内容は無いって事だ。

「では今後は私どもが各校の代表さんに連絡いたしますので、今日の所はこれで解散となります」

 横井さんがそうまとめると、全員立った。

「お疲れさまでした」

「「「おつかれさんです!!!」」」

 なんか横井さんの号令でお疲れさんと辞儀をした。こういうもんなんだろうか?

 つうか俺、やっぱ必要なくね?俺にぶっ飛ばすなとみんなが釘を刺すって話だったよな?そんな話無かったよね?

 なんか釈然としないが、兎も角帰ろうとドアを向く。

「緒方、ちょっといいか?」

 んあ?と振り向くと、深海の片山。それと海嶺の女子二人。

「なんだ片山?残念だけど俺は主催側じゃねーから質問や疑問には答えられないぞ」

 ただの置物だよ今回は。マジ何しに来たか解んねーよ。

「ああ、そうじゃない。いやいや、お前主催側だろ」

 なんか突っ込まれた。手の甲で、ぽんと。

「主催は白浜だけど、俺はただの一選手だよ」

「ああ、まあ、そこはいいから、ちょっと……」

 海嶺の女子二人がここで前に出る。

「あの、ウチらの学校の生徒って、当日沢山白浜に来るんですよ」

 佐倉さんが意味不明な事を言う。そりゃ自分の学校の活躍を見に来るんだから当たり前の事じゃねーの?

「なんか緒方君って、見たら殴るとかそういう噂を耳にしたんで……当日ウチの生徒に手を出さないで欲しいって言うか……」

「え!?何なのその噂!?つか片山、否定しとけよ!!」

 一般生徒も殴るとか思われているとは心外だ!

「いやいや、言ったよ勿論。俺だけじゃねえ、大雅もさゆちゃんも。だけどお前、物騒な噂しかないだろ?海嶺はまじめな生徒が多いから不安がってさ」

 だから俺の口から手は出さないと言って安心させて欲しいと。

 流石に深いため息をついた。遠い海嶺にそんな噂が流れているとか……」

「流石に見境なくぶん殴るような真似はしないから安心して……」

 げんなりしてそう言った。頷く海嶺の女子二人。

「確かに片山君が言った通りなんですが、南海でも危険人物扱いされているって言うから、ちょっと不安になって……」

「潮汐も緒方君には関わるなって言う話があるようですし」

「潮汐は俺関係ねーだろ。あの糞雑魚どもをやったのは友高校協定だ。片山もあの騒動の時に叩いた一人だよな?」

「その友高校協定から外れている危険人物だからそう言われてんだろ」

 確かにそうだけどもだ。

「ヒロと生駒も違うだろ」

「あいつ等よりもずっと物騒だからだろ」

 もうぐうの音も出ねーくらいその通りだった。

「ま、まあ、安心してよ……当日は暴れたりしないし。海嶺の演奏も聴いてみたいしな」

 言ったら佐倉さんに手をガっと握られた。

「え?なになになになに!?」

「ぜひ聴いてください!私たち一生懸命演奏しますんで!」

 なんか瞳をキラキラさせながらそう言われた。結構な迫力で。俺は愛想笑いで頷くのが精一杯だった。

「緒方、ちょっといい?」

 あん?と振り向くと、上杉と山塊のお二人。

「なんだ上杉?残念だけど俺は主催側じゃねーから質問や疑問には答えられないぞ」

「いや、アンタ主催側でしょ……」

「それ、俺にも言ったよな」

 上杉と片山が呆れる。いいんだよ、俺は置物なんだから。

「で、なんだ?山塊の生徒が当日多く出入りいるするから暴れんなってか」

「その通りだよ。良く解ったね」

「マジでそうなの!?」

 冗談で言ったらその通りだった。しかし、しかしだ。

「内陸には俺の噂、そんなに届いていないだろ!?」

「そうだったけど、そうじゃなくなったと言うか」

 トーゴーと兵藤をチラ見する上杉。二人は速攻で目を逸らせた。

「……あいつらがなんか言ったのか?」

「言ったと言うより触れ回ったと言うか……トーゴーは自分が負けたって事をなんかやたら広げて回るし、兵藤もそれに乗っかるしでね」

「なんでそんな真似するんだ!?俺の平穏をぶち壊そうとの算段か!?」

 わざわざ噂を広げるような真似をするとは、嫌がらせ以外にないだろ!!

「い、いや、そうじゃねえ、まず聞け」

 トーゴーが寄ってきて馴れ馴れしくも肩を組んできた。野郎に肩を組まれたら不愉快以外何物でもねーんだけど。

「俺も結構暴れて来たから、意外と敵が多いっつうかだな……」

 逆方向から兵藤が肩を組んでくる。だから野郎に肩を組まれたら不快だっつってんだろ。

「俺はほら、ストリートファイトのチームだけど、試合も結構強引に受けさせる事が多々あるから」

「お前、それは普通に喧嘩売っているだけだろ」

 相手にその気がないのに強引に押し切れば、そりゃ普通に喧嘩売って来たと思われるわ。

「そんな俺が負けたって言うんだ。俺よか強い奴にやられて、そいつがダチになったってんだから、もう狙えねえだろ?狙ったら確実に倍返しされるし」

「そんな俺がヤバくて危険で関わりたくねえ、やりたくねえ相手だって言うんだ。リベンジ狙いに来た連中もお前に目を向けんだろ?」

「お前等の身の安全のために俺を人身御供にしたのか!?」

 まあまあと宥める二人。俺の仮説が事実だと言う事の裏付けには充分だった。

「マジふざけんなよお前等!俺の平穏をぶち壊しやがって!お前等もぶち砕かれるのは覚悟してんだろうな!!」

「うわ……話に聞いたとおりだなあの人……」

「だよな……あの人ってムエタイの人だろ?その人を完全粉砕したって話だし、向うは喧嘩チームだとか?その人にも怖がられているようだし……大丈夫なのか?当日……」

 山塊のお二人が不安がってコソコソ話したのが聞こえた。

「ほら、緒方、お前が叫ぶからビビっちゃったじゃねえかよ。可哀想に」

「まったくだ。一般人を怖がらせるとか、ホント駄目な奴だよお前は」

 トーゴーが山塊のお二人をかばう様に言うが、兵藤なんか普通に悪口のような気もするが、確かにそうだ、この人達は関係ないから。

「緒方、ちょっとこの人たちの話聞いてやってよ?」

 上杉に言われて超がんばって笑顔を作って向けた。

 山塊の二人がびくっと身を固くしたのが解ったが、気にしてはいけない。自分でも解るのだから。この笑顔はどこもかしこも強張っていると。

 務めて笑顔になって山塊の二人を向いた。

「な、なにかな?」

「あの、顔、どこもかしこも引き攣っているけど、大丈夫なのか……?」

 ぐにゃぐにゃと手で顔をこねくり回した。

「なにかな?」

「さっきよか良くなったけど、そこまでするのか…話程じゃねえのかも…」

 そうだ。こいつら自分達が助かる為に、俺の噂を広げたんだから。的場の真似をしているっつうか。

「あ、あの、当日山塊からも生徒が沢山来るんだよ」

「うん。楽しんでもらえたらいいよな。だから頑張ろうぜ、お互いに」

 言ったら呆けた顔になった。意外だったか?だけど本心だよ。

「山塊は演劇だっけ?」

「え?ああ、うん。時間内でできる物に限られるけども。ホントはシェイクスピアとかやりたいんだけど、そこまでの時間が無いから」

 結構本格的なのか……

「じゃあミュージカルとかもやったりすんの?」

「やるにはやるけど、俺はやらない。女子達かな?」

「そうそう、宝塚の真似って言うかな」

 こんな感じで朗らかに時は過ぎた。トーゴーと兵藤は後で泣かせるとして、上杉が満足そうに腕を組んで頷いているから、まあ良しだろう。

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