二年の夏~001
期末もクリアして、夏休み。俺達は海に来ていた。以前から話していた友達全員でキャンプに来たのだ。
野郎共はみんな交通機関を持っているので、着替え等の荷物は郵送で運んでもらい、バイクで身一つ……じゃなく、愛すべき彼女さんを後ろに乗せてやって来た。
で、民宿に泊まる事になったのだが、流石に全員民宿って訳じゃない。キャンプチームもいる。こっちはコテージで自炊だ。
因みに、民宿チームは国枝君と春日さん、生駒と楠木さん、児島さんと玉内。松田と倉敷さん。そして、麻美と波崎さん、里中さんと鮎川さん。そして赤坂君とおさげちゃん。安達って言ったっけ?誘ったら来てくれる事になって嬉しいぞ。因みに誘ったのは横井さんだ。これには俺もビックリだった。
横井さん曰く「だってお友達でしょう?少なくとも緒方君の」だそうだ。俺に気を遣ってくれたのは嬉しい限りだが、横井さん自身赤坂君の評価を大きく上昇させた結果だろう。
それに伴い、俺も便乗して一つ噛ませたけど。
コテージ班は俺、遥香、ヒロ、河内に横井さん、木村と黒木さん。大雅と橋本さん。
民宿チームはバイトや学校で時間がこの日って事で一纏めになった感がある。ヒロと波崎さんが違うグループに居るのはその関係だ。国枝君は春日さんと一緒にが非常に強いからそうなったし、彼氏がいないロンリー女子はコテージよか民宿だときゃいきゃいはしゃいでこうなった。
つまり、コテージ班は一泊に限らず、二泊、三泊も辞さない奴等が集まっている。国枝君と麻美も状況次第でこっちに合流する予定だ。
コテージ班の弱点は自炊なのに料理スキルを持っている人が少ない事か。まあ、木村がバーベキューするって事で、結局夕飯は一緒になったのだが、二日以降が不安だ。二泊するかは状況次第だが。
「つう訳で早速海に行こうぜ。奴等もそろそろ来てんだろ」
荷物の整理を終えた木村がそう言う。
「水着は?一応海でしょ?」
黒木さんに質問されて頷く。
「物騒な事になんねえからいいだろ。普通に海入って遊べばいい」
「明人は?」
「まあ、状況次第だな。尤も、粗方話は纏まったが、あの場に居なかった連中もいるし、事情を知らねえ奴も来た。だからまあ、普通に仲間同士の旅行だよ」
そっか、と頷いて女子達は別室に移動する。着替えるんだろう。ならば俺達も着替えようか。
外に出て砂浜を目指して歩いていると、ヒロがブツブツうるせー。
「お前うるせーよ、そこまで言うんなら素直に民宿に行ったらよかっただろうが」
「金がねえんだから仕方がねえんだよ。しかし、波崎と一つ屋根の下を逃したのが悔し過ぎる!」
もう血涙を流しそうな勢いだった。歯を食いしばって血管まで浮かせているし。
「ザマァねえな大沢!俺と千明さんの様に強い絆で結ばれていないからそうなったって事だ!」
ご棄権よく横井さんにシュースがびっちりのクーラーボックスとスイカ三玉持たされている河内が勝ち誇ったように言う。
「言っておくけれど、寝る時は別々の部屋よ?釘を刺すまでもないけれど」
「えー?じゃあ私も?明人と一緒じゃ駄目なの?」
「当たり前でしょう?風紀を乱すような行為を容認する訳にはいかないわ」
黒木さんが仕方がないと頷きかけるも、いやいやと。
「じゃあ緒方君と遥香はどうなのよ?」
「勿論別々よ。尤も、風紀を乱す可能性があるのは槙原の方だけれど」
「じゃあ大雅君と橋本さんも?」
「勿論別々に決まっているでしょう?付き合いが長い二人とは言え風紀を……」
「まあまあ、付き合いが長いは置いといて、普通に男女別だって事だよ。当たり前だけど正輝は男子の部屋ね」
同意のように頷く大雅、苦虫を噛み潰したような顔の遥香と河内だった。実に対照的で解り易い。
砂浜に到着。キョロキョロしていると、こっちを発見して駆けよって来る女子二人。
「遅い!!喉渇いた!!ジュース飲みたい!!」
オレンジのビキニを披露する様に仁王立ちして凄む麻美さん。
「緒方君、いい加減フリーな男子紹介して欲しいんだけど!!」
花柄のヒラヒラビキニでやっぱり俺を凄む鮎川さん。そしてちょっと驚いた。
鮎川さんスタイル良過ぎる!!まるでモデルの様に!!
「何見惚れているのよダーリン?」
遥香が引き攣りながら笑って頬をつねってきた。痛い。
「そ、そんな事は無い。俺はお前が一番だからな」
「ホントに?鼻の下伸び過ぎじゃない?」
覗き込んでそう言った。そんな事は無いと河内を指差す。
「鼻の下が伸び過ぎってのはああいう奴の事を言うんだ」
その河内は横井さんにサミングされてクーラーとスイカを持ちながら両手で目を押さえていた。
「河内君はいいのよ。ダーリンは私がいるでしょ」
「だからお前が一番だって言ってんだろ。つうか河内はいいのか……」
「だって横井の管轄だから。躾は横井の仕事だし」
躾って……横井さんにおける河内のポジがイマイチ掴めない。恋人との自覚はあるのかな……
ともあれ、麻美にジュースは河内が持ってると伝えると、河内目掛けて突貫して行った。クーラーボックスを奪おうと言うのだろう。
じゃあ、と改めて鮎川さんの方を向く。
「えーっと、フリーな野郎は今日来るから……」
「白浜じゃ無きゃ嫌だって言ってんでしょ。今日くる人達遠いんだから」
まあ、確かに遠いな。じゃあ生駒辺りに頼むか。
「言っておくけど、西高、東工、荒磯は論外だからね」
「条件厳しいな!?」
じゃあ生駒にも児島さんにも頼めねーじゃん。荒磯の野郎を紹介しようとは思わないけど。
鮎川さんは北商で、北商の男は駄目だと言っていたので、実質海浜と白浜だけじゃねーか。
「あの、せめて東工は良しとしてくれない?」
「まあ……馬鹿じゃないならね」
「それってどうやって見切ればいいんだ!?」
成績か?生駒も結構成績は良かった筈だが。
「まあ……生駒君レベルなら?」
じゃあ何とかなるかもと胸を撫で下ろす前に――
「喧嘩の強さとか、ルックスとか、性格とか」
「逆にハードル上がったぞ!?」
生駒レベルの野郎なんて東工にいねーよ!!そんな良い奴なら逆に俺に紹介して欲しいくらいだよ!!友達になりたいじゃねーかよ!!
「まずは向こうに合流しよう。麻美さん、ジュース取れないって愚図っているから」
河内からクーラーボックス奪ってないのか。まあ、あれ重いからな。
じゃあ早速とばかりにビーチパラソル数本刺さって固まっている個所に向かう俺達。
「おう緒方、おせえぞ。そしてこいつ何とかしろ」
玉内が腕に絡み付いている児島さんを指差す。結構迷惑そうに。
「お前の彼女だろ。お前がどうにかしろ」
「テーブル広げている最中なのに邪魔だっつってもどかねえんだよ……」
「だって久しぶりに会えたじゃん?どうこの水着?かわいい?」
児島さんの水着は豹柄のビキニ。可愛いけどギャル臭がパネエ。
「お、おう、可愛いぞ……」
「そっかそっか!やっぱもう一部屋取る?他の子達とは別に、二人部屋さー」
「そ、それはちょっと……生駒達とも話ししたいし……」
迫られてしどろもどろだった。そういや部屋割りはどうなってんだ?
同じようにテーブル設置に精を出していた生駒をとっ捕まえて訊ねた。
「ああ、三部屋だよ。男子一部屋に女子二部屋」
「ふーん。お前は楠木さんと二人きりじゃなくてもいいのか?」
「え!?いや、美咲はそうしようって話だったけど、折角みんな集まるんだし……そ、それに四人部屋なら料金が安くなるし……」
ごにょごにょ言い訳し始めた。つうか何処もかしこも女子の方が積極的なのはどう言う事だ?
「よう緒方。俺もコテージ班の方が良かったけど、時間があんま取れなくてさ、悪いな」
松田がやや申し訳なさそうに寄って来た。
「いや、逆にこっちの方が申し訳ない気持ちだ。お前忙しいのに無理させたからな」
「ああ、いや、一泊二日程度の休みは貰えるからその辺はいいけどよ、本来ならあの話なんだろ?だったらじっくっりした方が良かったかなってさ」
そう言って部外者カテの赤坂君とおさげちゃんを見た。和気藹々していて微笑ましい。
「ああ、あっちも部外者一人連れて来るからって事でな。赤坂君は面識があるし、何なら連れ出して貰えるし」
「その『あっち』はいつ来るんだ?そろそろ時間じゃねえのか?」
そんな事を話していると野郎共全員『ピリッ』とした空気になった。
「……来たようだな」
「おう、あれが例の……?」
頷く。そして誰よりも早く『奴等』の前に立つ。出迎える為じゃない。先にやって貰う事があるからだ。
「……よお糞女。よくも逃げずに来たな。そこは褒めてやる」
糞女事上杉を見下ろすように睨んで言った。そう、待ち人は『とうどうさん』。東山を先頭にこっちに向かって歩いて来たのだ。
「……そんなおっかない顔しなくてもいいじゃない?ちゃんと謝るんだからさ……」
ビクビクして身を引いた上杉。それに庇うように立つ兵藤。
「まさかやるっつう訳じゃねえよな?一応仲間カテな筈だぞ俺達は?」
鼻で笑った。
「俺はお前とはやんねーよ。つか、『とうどうさん』とはもうやらねーよ。お前等が糞くだらねー事しない限りはな。そう約束しただろ?お前と揉める事になったらやるのは木村だ。あいつ横取りするとうるせーからな」
「まあ待ちなよ緒方君。そんなに殺気立っちゃ謝るにも萎縮してできなくなるよ。でしょ?上杉さん」
国枝君に庇われて安堵の息を吐く上杉。そして一人、おさげちゃんの元に向かった。これが赤坂君とおさげちゃんが参加する事になって俺が噛ませて貰った事だ。
糞女事上杉がおさげちゃんに謝罪する事。それは当たり前ですと藤咲さんが同意したが、上杉に確認を取っていないのでどうなるか当日まで解らなかった。断ればぶち砕かれるのは想定しているだろうから、まず断らないとは思っていたけど。
おさげちゃん、上杉に気付いて顔を上げた。
「あの時は、その、あなたの彼氏に酷い事をしてごめごはっ!?」
最後まで言わせずにボディをぶん殴ったおさげちゃん。赤坂君真っ青になった。
「……これで勘弁してあげます。あるくんにもちゃんと謝ったって言う話ですし」
「そ、そう……ありがとう……でも、意外と力があるのね……」
ボディを押さえてプルプルしながらそう言った。
「水泳部ですからそれなりに鍛えてますから」
「いや、安達ちゃん。高校に入ってから部活やってないじゃないの……」
橋本さんの突っ込みが入った。おさげちゃん部活やっていなかったのか……
「ボクササイズはちょーっとだけやってますよ。玉内さんのジムでそう言うの募集していたんで」
成程、それであのボディか。キレあったもんな。
「……あれでいいだろ緒方」
兵藤がそう言う。これ以上はマジやめてって感じで。
「おさげちゃんが許したんならもういい。まあ、糞女から上杉に格上げにしといてやる」
ちゃんとケジメ付けたって事でまあ、いいにしといてやる。これ以上は俺も面倒くせーし。
「格上げじゃなく普通になっただけだろ」
「それを俺の中じゃ格上げと言うんだ」
それとも糞女の儘の方がいいのか?そうなったら敵のままなんだが。
「まあ、ちょっとゴタゴタがあったが、これで蹴りって事でだ。これは俺からのオゴリだ」
トーゴーが袋いっぱいの焼きそばとか焼きいかとかを差し出した。
「なかなか気が利くじゃねえかよタイ人」
早速相伴に与ろうとして手を伸ばしたヒロだが、その手を叩かれた。
「女子からだ馬鹿め」
「馬鹿は余計だが、その通りだな……」
恨めしそうに袋から離れたヒロ。児島さんがおさげちゃんの腕を引っ張って袋に向かって来た。
「安達ちゃん、どれがいい?安達ちゃんから選ばせてあげる」
「えー?いつきさんと同じの半分こって事でどうですか?食べ過ぎてお腹が目立つのも何ですし」
きゃいきゃい物色してそう言った。あの件からおさげちゃんは児島さんに懐いている感じだったしなぁ。
「ダーリンどれがいい?半分こしよう。お腹が目立つのっての、同感だし」
「なんでもいい。つうか俺に気を遣うな。好きなモン取れ」
「そう言ってまた食べないとかしそうじゃない。許していない空気はもう作らなくていいんでしょ?」
むう……そこまで見切るとは……女の勘はかくも恐ろしいものだな……
「いや、緒方君顔に出ていますよ?食いたくねーな。つか慣れ合いたくねーなって」
何と……藤咲さんにすら見切られるのか、俺の表情は……じゃあ遥香なら楽勝で看破できるよなぁ……
「明人、どれがいい?半分こしようよ」
「あー……焼きそば」
「千明さん、どれがいい?半分にしようぜ!」
「解ったから大声を出さないで頂戴。軽めの物でいいわ。なんなら君が選んでもいいわよ」
「大沢君は?」
「波崎の好きなモンでいいぞ、半分にするんなら」
なんかみんな普通に差し入れを物色しているがな。時折俺をチラチラ見ながら。
「みんなダーリンに気を遣っているねえ。俺も食うからお前も食え。そして気に入らん空気を作るなって」
「……こればっかりは性分だからな。だけど、心情的にはそうだが、許したってのは本当だぞ」
「じゃあトーゴー君のオゴリを戴こうよ?」
「解ったって。好きなモン取って来いよ。ちゃんと感謝して食うから」
はーいと言って物色に向かう。いや、本気で食いたくないんだが、これ以上みんなに気を遣わせるのはなぁ……
「お前ってホント意固地なんだな。俺でもそこまではっきりしなかったよ?」
白井が呆れながら缶コーヒーを渡してきた。それを有り難く戴く。
「まあ、性分だから我慢してくれ。これでもかなあり丸くなったんだぞ言っておくけど」
最後の繰り返しまでもっと酷かったんだからな。ヒロ以外だーれも信用していなかったって言う。
「俺の事よりもトーゴーはどうなんだ?俺に負けて緒方許さんにならなかったのか?」
「思う所はあるんだろうけど、完璧に負けたって言っていたよ」
完璧に勝った自覚があるからそれは結構な事だ。まだ負けてないとかごねられても困るからな。リベンジ喰らうのも面倒だし。向かって来るなら普通にぶち砕くけど。
遥香が持って来たのはイカ焼きだ。半分こと言っても半分食って渡す方法しかない。櫛に丸ごと刺さっているタイプだから。
つう訳でゴチになりまーすとみんな齧り付いた。俺は遥香のお残し待ちだ。
手持ちぶたさも手伝って、缶コーヒーをちびちびやる。
「俺に勝った奴が物調ズラしてコーヒー啜ってんじゃねえ」
なんか知らんがトーゴーが横に座ってフランクフルトを伸ばした。それを丁重に断る。
「いや、マジでいい。夜のバーベキューが楽しみだから、本当は腹に何も入れたくねーんだ」
半分本心だ。バーベキューマジ楽しみ。
「そうか、それには俺達も参加するんだが、その物調ズラはその時まで戻るんだろうな?」
「え?お前等も参加すんの?結構な人数になるぞマジで」
「当たり前だ。本題はその後の話なんだから。因みに食材提供もした」
お前等も食うんだったらそれは当たり前だ。松田なんか派手に輸送したらしいぞ。流石農業高校って感じで。
「つうか話って、あの時いなかった奴等に同じ説明すんだろ?」
「あーっと、えーっと……ちょっと違う……あーっと……」
困っているトーゴー。そこに遥香が来て半分食ったイカ焼きを俺の口に押し込んだ。
「目新しさが無いのが不満なのかな?じゃあこういうのはどう?みんなー!!」
叫んで注目を向けた。あの企んでいる顔を全開にして笑いながら。
「そろそろ修旅のお知らせが届いていると思うんだけど、みんなの学校は何処に行くの?」
あん?と思った。二年の秋まで生きたのは一度だからよく解らんが。白浜は京都で西高は北海道、南女は沖縄だった筈。
「ああ、ウチは京都だ」
木村が発した。え?京都?まあ、色々な可能性かあるのが未来だからな……
「おお、ウチも京都だぜ。毎年沖縄に行くんだけど、何故か今年はそうなった」
松田が不思議そうに。え?マヤ農も京都なの?しかもいつもは沖縄なのに、今年は変わったのか?
「ああ、東工も京都。こっちは別に不思議じゃないな。大抵京都、奈良らしいから」
生駒が特にと言った感じで。東工はそうなのか……
「南女も京都だよー」
波崎さんの言葉に目を剥いた。マジで!?まさか、ひょっとして……
「おい河内、黒潮は!?」
「京都。俺としちゃ白浜と一緒なのはラッキーだな。千明さんと旅行気分が味わえる!!」
アホみたいな幸せ顔は置いといて!!
「た、大雅!!」
「南海も京都だよ。今年は台湾だった筈だけど、急遽変更になったらしい」
マジか!?なんだこの偶然!!いや、偶然じゃねーだろ!なんかやったんだ遥香が!!
「へえ?お前等も京都なんだ。渓谷学院もそうだぜ、なぁ幸?」
「そうですね。まあ、ウチの場合は大抵そうらしいですけど、こんな偶然ってあるんですね」
ニヤニヤ笑い合いながらそんな事を言った。つう事は……!
「白井!お前の学校は!?」
「俺は中洲情報ってところだけど、京都だよ。珍しいんだよ、ウチの学校で国内は」
「と、トーゴー!?」
「俺と上杉は丘陵中央って所だが、京都だな。いつもは南国の方に行くらしいが、今年はちょい違ったようだ」
「兵藤!?」
「連山工業も京都だな。大体そこらしいけど、今年は日程がちょい遅くなったって話だ」
『とうどうさん』連中もニヤニヤと!!まさか日程まで一緒!?こんなに集まるのは絶対に偶然じゃない!!
「へえ?凄い偶然だねえ?何かの力が働いたような?」
思い切り含みのある笑顔を俺に向けてそう言う遥香。つう事は、つまり……
「お前『とうどううむっ!?」
発する途中に口を押さえられた。そして接近してウィンクして舌を出す。
やっぱりか!!こいつ『とうどうさん』の力で修旅を京都に変えたんだ!!つうか『とうどうさん』を引き込んだ理由の一つがそれだろ!!
「ま、そう言う事だから、向こうに着いて自由時間が一緒なら一緒に遊ぼうぜ。病院とかにも見学に行きたいし」
東山が馴れ馴れしく肩を組んでちっさい声でそう言った。と、言う事はつまりだ……
「まさか……全員自由時間一緒か?」
「さあね。詳しい事は夜にでもだ。こっちの事情に関係ない赤坂?だっけ?とかその女とかは上杉が面倒見てくれるから」
あの糞女からランクアップしたまあ、いいの上杉が、赤坂君達こっちの事情に関係ない人達の接待をするって?
「だ、だけど、鮎川さんは違うだろうが、赤坂君達は上杉を嫌い、とまでは言わないが、あんま話したくないんじゃ……?」
「殺伐を気にしてんのか?それについても手は打ってある。お前の女が」
遥香が何か細工したのか?まあ、あいつならなぁ……
「男同士内緒話なんてキモいよ隆。折角海に来たんだから海ならではの遊びしよう。要するに身体動かそう」
麻美さんが焦んなって感じで間に入って来た。確かに、今の状況じゃ物騒な話はしたくないよな。あ、だから赤坂君達も誘ったのか?深刻状態に陥らないように?
「よし、そうするか。じゃあ海らしくスイカ割りだ」
「おおう!隆の分際でナイスアイデアだよ!早速河内君に用意させよう!!」
そう言って横井さんにじゃれ付いている河内目掛けてダッシュした。自分で用意すればいいのにあいつも酷いよな。今更だけど。
そんな河内を遠目で見ていると、嫌だよとか自分でやれとか騒いでいたが、横井さんが用意しなさいと言った途端、しおらしく冷やしてあるスイカに向かった。あいつ、色々不憫だな……めっさ同情する。
「ほら!!これでいいんだろ!!」
でっかい声で仕度が終わったとアピる。ブルーシートが敷かれてスイカが置かれていた。
「おう、ご苦労河内」
「労いが適当過ぎるぞ大沢あ!!もっと感謝しろよ!!つか棒持つのかよ!!お前が最初なのか!?」
麻美が頼んだのにヒロが横取りするとは。これは一言言わなきゃいけないだろ。
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