4月の隅で
咲かなかった桜の木の下で、7度目の花見をする。
引っこ抜かれた桜は跡形もなく消えていてそこにはただ土があるばかり。
桜の木がこれから先咲かないとしても、いつかの日のためにここを守っていくと決意した。
ピンク・シャンパンをグラスに注いで、もし咲いていたなら根元があるだろう場所に置く。
春の陽に照らされて小さな泡がはじけていく。
海を見据えて、私は母国には愛されなかったようだ、と零すあなたの瞳がひどく悲しそうだったのをよく覚えている。
紺碧の海の向こう側であなたは何を思っていましたか。
何を感じてこの国を離れましたか。
傷だらけで痛くはなかったですか。
守ってあげられなくてごめんなさい。
もう、あなたがいない明日を迎えるのが怖くなってしまいました。
桜を司る美しい孤高の人よ、どうか安らかに。
またいつか、新しい苗木が植えられて桜が咲く時まで。
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