深夜、大学にて
「……なーんか、その人形俺に似てね?」
「名前はジュリエットだよ」
時刻は日付が変わるか変わらないかの真夜中。深夜の薄気味悪いプレハブ小屋で四人は合流した。
津下山大学は学生に寛容な大学なので、学生証さえ見せれば深夜早朝問わずいつでも入場可能である。それもこれも、研究に追われて深夜寝る間もなく活動する学生を数多く抱えているからなのだが、ここではその話を割愛させていただこう。
また、深夜にサークル活動するのは珍しいことではない。野鳥の会はコウモリの生態調査に赴くし、飲みサーが構内で缶チューハイ片手に親睦会、という光景もよく見られる。
とどのつまり、深夜に学生が居るのは何ら不思議ではないのだ。ただし、ホテル代わりにワンナイトラブと洒落込んだ暁には、おっかない警備員によって袋叩きにされるが……
「お米と赤い糸、それから刃物もバッチリよ!」
「なあ、やっぱりその人形俺に似てね?」
「気のせいでしょう? あ、ちょっとそこのマジックちょうだい」
「泣きボクロ付け足すんじゃねーよ! やっぱ俺じゃねーか!」
喜々として準備を進める陽瑠。その彼の手には金髪の愛らしい人形、ジュリエットが握られている。
どことなく琉依に似ている人形であったが、先ほど陽瑠が琉依のチャームポイントの泣きボクロを描いたことにより、より一層琉依に近づいてしまった。
「陽瑠さんに質問でーす!」
ジュリエットの腹を裂きながら恵理が尋ねる。散々琉依に似ていると言っていたのにも関わらず、彼女は豪快に引き裂いた。
容赦のない恋人の仕打ちに琉依が悲鳴を挙げる。心なしか腹に痛みが走ったように思えたが、気のせいだと信じたい。
恵理はそんな琉依を軽くあしらって、中の綿を取り出していく。勢い良く指で掴んで引きずり出す様は中々グロテスクで、前世が鬼であったとされることもあって、いらん想像が頭の中に浮かんでしまった。
白い綿が赤く見えるのは、きっと何かの間違いだろう。
「何かな、鬼越さん?」
「ずっと疑問だったんですけどぉ、誰がかくれんぼするんですか?」
「あ……」
陽瑠は、特に考えていなかった。
「僕じゃ駄目かな?」
「陽瑠さんじゃなんか居ても見えねーし、第一普段から怪異が服着て歩いてるようなもんだから、かくれんぼで起きたもんなのかわかんねーよ」
「わたしは?」
「恵理ちゃんは怪異が逃げる」
「じゃあ、琉依がやる?」
「自慢じゃねーけど、俺も陽瑠さんとは別の意味で怪異が歩いてるようなもんだから意味ねーよ」
「だとすると……」
陽瑠、琉依、恵理の六つの瞳が一点に注がれる。
視線の先にはーー
「私……?」
しっかりと木刀を抱きしめた蕗世がいた。
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